MarkdownノートアプリInkdropの近況と今後のマーケティング戦略

MarkdownノートアプリInkdropの近況と今後のマーケティング戦略

MarkdownノートアプリInkdropの近況と今後のマーケティング戦略

本稿は、フリーランスしながら一人でプロダクトを作って食いたいプロジェクトの進捗報告です。InkdropはMarkdown好きのためのノートアプリです。これを一人で受託やりながら作っています。

  • 開発が超順調
  • 次はノート共有機能を付ける
  • 食える気がする
  • コンテンツマーケティングをこれからがんばる
  • これはスタートアップではなくスモールビジネス

つい昨日、Android版をリリースしました。これで、macOS、Windows、Linux、iOSを含めた5つのプラットフォームで動作するアプリになりました。2ヶ月前にiOS版をリリースしたので、開発ペースとしてはかなり順調と言えそうです。

今後の拡張計画として大きなものはノートの共有機能です。Gistっぽい感じで手軽に共有できるようにしたい。イメージとしては、ノートに可視範囲としてPrivate(秘密)、Unlisted(リンクを知っている人のみ公開)、Public(全体に公開)の3つを指定できるようにします。

個人的には、Mediumでプログラミング関係のブログがすごく書きづらいので、それをInkdropで代替できたら便利な気がすると思っています。なのでRSSに対応したりとか、ユーザ指定のGoogle Analyticsタグ埋め込みも出来るようにしたいなと考えています。

ずっと開発ばかりしていてマーケティングらしいことはほぼ何もしていませんが、売上は堅調に伸びています。なのでこのプロダクトはしっかりお金を生み出すだけの価値が提供できていると確信が持てつつあります。共有機能がリリースできたら、月5ドルという価格は個人的にも充分に納得のいく値段だと思います。

先々月の売上は19,628円でした。先月は24,311円、今月は26,242円です。とりあえずサーバ代は余裕で賄えます。これを10倍にすれば余裕で食えます。0を1にするよりは簡単だし、なんかできそうですよね。Stripeから支払い通知が来るたびに大喜びしています。まっちゃんニンマリやで。

こちらは開発中の画面。Vibrancyエフェクトを試しに適用してみた。かっこいいので正式に対応したい。

経験的にも周りを見ても、短期的なバズりは短期的な効果しか得られません。一人でサービスを運営するためにもゆっくり堅実に成長していきたいので、爆発的な流行は狙いません。だから集客の方法としてコンテンツマーケティングが自分には合っていると考えています。

僕はBasecampやRuby on Railsで有名なDHH氏を敬愛しているのですが、彼の書籍「Getting Real」にこうあります:

Start off by creating a blog that not only touts your product but offers helpful advice, tips, tricks, links, etc. — David Heinemeier Hansson

また別の書籍によると「ブログするなら最低6ヶ月は注力するべき」とあったので、かなり忍耐力が求められるし茨の道であることを覚悟する必要がありそうです。というか今すぐにでも始めるべきですね。英語の練習にもなるし、筋トレみたいなもんと考えればいいかもしれません。ノートの共有機能がリリース出来たら、ぼちぼち始めようかと。いろんな仕事改善系のブログを調べて、見よう見まねから始めていくのが良い気がします。

ちなみにDHHが勧めているマーケティング手法は以下のとおりです:

  • Post tips and tricks at your site that people will want to share with others.
  • Speak at conferences and stay afterwards to meet and greet with attendees.
  • Conduct workshops so curious fans can learn more and talk to you in the flesh.
  • Give interviews to publications.
  • Write articles that share helpful information.
  • And write books.

Aha! 全部一気にやるのは難しそうですね。ただ共通して言えることは「価値の提供」だと思います。みだりにメールを送りまくったりバズを引き起こしたりといったことを彼は勧めていません。誰でも上手く出来るとは言い難い手法ですが、これを諦めずにしっかり続けられる人が長く生き残るのかなと思います。

なにかIT業界でプロダクトづくりを始めたら自動的にスタートアップとみなされるようなイメージがありますが、Inkdropのビジネスはスタートアップとは違います。Paul Grahamによるとスタートアップの定義は次のとおりです。

A startup is a company designed to grow fast.— Paul Graham

ようは、めっちゃ速いスピードで成長することを主眼においた会社のことです。でも、Inkdropは急成長を目的にしておらず、自分がそれなりに食って自由に生きることを目的としています。こういった生き方・ライフスタイルに僕は強いこだわりを持っています。

node.js界隈で有名なexpressなどの作者であるTJ Holowaychuckを、僕は敬愛しています。彼はスタートアップで働いていましたが、独立して一人で会社を立ち上げ、Apex Pingというサービスを提供しています。そんな彼のブログに印象的な一文が記されていました:

Lifestyle is also increasingly important, the more I work, the more I realize I should be doing things I enjoy, at a healthy pace, and not worry about the other kinds of “success”. — TJ Holowaychuk

彼はいわゆる「成功」を勝ち得ることよりも、自分のペースで自分が好きなことをするライフスタイルを大事にしているのです。僕もこれにすごく共感します。こういう生き方を自分もしたい。DHHも語っていますが、みんながみんな競い合ってほんの一握りの大成功を目指す必要ありません。

一歩ずつ、進めていきます。応援してもらえたら嬉しいです!

Inkdrop: https://www.inkdrop.app/フィードバックを送る: https://github.com/inkdropapp/forum/issuesお問い合わせ: contact@inkdrop.appTwitter: https://twitter.com/inkdrop_app

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Inkdrop v6 Canary版リリースしました — 新Markdownエディタやその他新機能盛り沢山

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個人開発を7年以上続けて分かった技術選択のコツ

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個人開発を7年以上続けて分かった技術選択のコツ InkdropというMarkdownノートアプリを作り続けて7年になる。 お陰さまでその売上でずっと生活できている。 これまで個人開発でどう継続していくかについて「ユーザの退会理由をあれこれ考えない」とか「アプリの売上目標を立てるのをやめました」とか、ビジネス面あるいはメンタル面からいろいろ書いてきた。 今回は、技術面にフォーカスして、どう継続して開発していくかについてシェアしたい。 TL;DR * 最初はとにかく最速でリリースする事を最優先する * 迷ったら「ときめく方」を選べ * 程よいところで切り上げて開発を進める * 使っているモジュールがdeprecatedされるなんてザラだと覚悟する * 古いから悪いとは限らない * シンプルにしていく * 老舗から継続の秘訣を学ぶ * 運ゲー要素は排除しきれない 最初はとにかく最速でリリースする事を目標に技術選定する 開発計画とビジネス計画は切っても切り離せない。 コーディングに傾倒するあまり完璧主義に陥って結局リリース出来ないまま頓挫してしまう個人開発者は多い

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子育て中の個人開発者の一日

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子育て中の個人開発者の一日 どうもTAKUYAです。 久しぶりに生活まわりの事を書きたい。自分はInkdropというMarkdownノートアプリを売って生きている。 子供も無事順調に成長しており、あと数ヶ月で3歳になるというところで、イヤイヤ期もやっと終わりが見えてきた。 生活パターンもなんとなく定着しつつあるので、ここで一旦どんなルーティンなのか書き出してみる。ちなみに当方今年で40歳。 平日の1日の流れ * 06:30 妻と子供起床、朝食 * 07:10–30 俺起床、朝食 * 07:40 布団を畳んで子供を着替えさせる。妻はその間に化粧や通勤の準備 * 08:00 ストレッチと軽い筋トレ(腕立て50回、スクワット100回) * 08:10 妻と子供を見送る。15分前後瞑想 * 08:30 散歩 * 09:00 作業開始(カフェまたは家) * 11:00 昼飯 * 12:00 ダラダラする * 12:30 作業再開(だいたい家)

By Takuya Matsuyama