よいDXに向けてRecomposeのHOCをReact Hooksに置き換える

よいDXに向けてRecomposeのHOCをReact Hooksに置き換える

よいDXに向けてRecomposeのHOCをReact Hooksに置き換える

English version is here.

どうもTAKUYAです。InkdropというMarkdownノートアプリを1人で作っています。そのモバイル版はReact Nativeで組まれています。最近コードベースをリファクタリングして、RecomposeからReact Hooksに乗り換えました。本稿ではその作業の際に発見したコツなどをシェアしたいと思います。

HOC多用はメンテナンス性が低くなる

RecomposeとはHOC(Higher-order components)で効率よくStateless functional componentsベースのReactアプリを組むための便利関数ライブラリです。作者はAndrew Clarkです。例えるなら、React版Lodashみたいな感じです。このライブラリの開発は2018年12月4日を最後に止まっています。なぜなら彼がReactのチームに参加したからです。そしてReact HooksがReact v16.8にて導入されました。

彼らが言うように、React Hooksを使うためにわざわざ夜を徹して既存コードを書き直す必要はありません。でも僕はやりました。自分のコンポーネント群を書き直した理由はいくつかあります。RecomposeはHOCベースでアプリを書くためのライブラリです。HOCの関数群は再利用性が高いため、同じロジックを書く手間を大きく省いてくれます。一方で、このRecomposeとHOCを採用することによるデメリットもあることが分かりました:

1. スタティックタイピングが上手く動かない

僕はプロジェクトのタイプチェックにFlowを使っています。RecomposeのFlow定義は次の例のように、FlowのType Inference機能に強く依存しています:

import { compose, withHandlers, pure, type HOC } from 'recompose'
type Props = {}const enhance: HOC<*, Props> = compose(
connect(({ editingNote, editor, session }) => ({
editingNote,
readOnly: editor.readOnly || session.isReadOnly
})),
pure,
withKeyboard(),
withHandlers({
handleTitleFocus: _props => () => {}
})
)const Editor = enhance(props => {
// ...
})

これだとなぜか props が頻繁に any として解決されてしまって、コンポーネント中のタイプチェックが上手く働かない事があって困っていました。Flowは僕が間違ったプロパティを参照しようとしていても教えてくれません。これでは意味がない。さらに、 props の中身がコードを見ただけではすぐに分からないという問題もあります。HOCの入れ子が増えれば増えるほど、この問題は深刻化します。

2. React Developer Toolsでデバッグしづらい

Many nested HOCs appear in Elements

上記画像をご覧の通り、たくさんのpure(withHandlers(Component)) のようなHOCが積み重なっており、実際のコンポーネント構造が全く把握できません。そのせいでReact Developer Toolsの実用性がほとんど失われてしまっています。

3. fbjsに依存している

Recomposeはfbjsに依存しています — — これはFacebookが内部で使っている便利ライブラリですが、今は廃止されてメンテされていません。このライブラリが更に古いモジュールに依存しているため、使うだけで不必要にプロジェクトは肥大化し脆弱になってしまします。なので、僕はいつもfbjsが依存ツリーに含まれていないか確認しては除去するように努めています。

Read more

Inkdrop v6 Canary版リリースしました — 新Markdownエディタやその他新機能盛り沢山

Inkdrop v6 Canary版リリースしました — 新Markdownエディタやその他新機能盛り沢山

Inkdrop v6.0.0 Canary版リリースしました — 新Markdownエディタやその他新機能盛り沢山 こんにちはTAKUYAです。 v6.0.0 の最初の Canary バージョンをリリースしました 😆✨ v6では、アプリのコア機能の改善がたくさん盛り込まれています! * リリースノート(英語): https://forum.inkdrop.app/t/inkdrop-desktop-v6-0-0-canary-1/5339 CodeMirror 6 ベースの新しいエディタ フローティングツールバー v5ではツールバーがエディタの上部に固定されており、使っていないときもスペースを占有していました。 v6では、テキストを選択したときだけ表示されるフローティングツールバーに変わりました。 GitHub Alerts 構文のサポート Alerts の構文が正しい色と左ボーダーでハイライトされるようになりました。 ネストされたアラートや引用にも対応しています。 また、アラートタイプの入力を支援する補完機能も追加されました。 スラッシュコマンド 空行で /

By Takuya Matsuyama
AIのお陰で最近辛かった個人開発がまた楽しくなった

AIのお陰で最近辛かった個人開発がまた楽しくなった

AIのお陰で最近辛かった個人開発がまた楽しくなった こんにちは、TAKUYAです。日本語ではお久しぶりです。僕はInkdropというプレーンテキストのMarkdownノートアプリを、デスクトップとモバイル向けにマルチプラットフォームで提供するSaaSとして、かれこれ9年にわたり開発運営しています。 最近、その開発にClaude Codeを導入しました。エージェンティックコーディングを可能にするCLIのAIツールです。 最初の試行は失敗に終わったものの、徐々に自分のワークフローに馴染ませることができました。そして先日、アプリ開発がまた「楽しい」と感じられるようになったのです。これは予想外でした。 本稿では、自分がエージェンティック・コーディングをワークフローに取り入れた方法と、それが個人開発への視点をどう変えたかを共有します。 * 翻訳元記事(英語): Agentic coding made programming fun again 自分のアプリに技術的負債が山ほどあった ご想像のとおり、9年も続くサービスをメンテするのは本当に大変です。 初期の頃は新機能の追加も簡単で

By Takuya Matsuyama
個人開発を7年以上続けて分かった技術選択のコツ

個人開発を7年以上続けて分かった技術選択のコツ

個人開発を7年以上続けて分かった技術選択のコツ InkdropというMarkdownノートアプリを作り続けて7年になる。 お陰さまでその売上でずっと生活できている。 これまで個人開発でどう継続していくかについて「ユーザの退会理由をあれこれ考えない」とか「アプリの売上目標を立てるのをやめました」とか、ビジネス面あるいはメンタル面からいろいろ書いてきた。 今回は、技術面にフォーカスして、どう継続して開発していくかについてシェアしたい。 TL;DR * 最初はとにかく最速でリリースする事を最優先する * 迷ったら「ときめく方」を選べ * 程よいところで切り上げて開発を進める * 使っているモジュールがdeprecatedされるなんてザラだと覚悟する * 古いから悪いとは限らない * シンプルにしていく * 老舗から継続の秘訣を学ぶ * 運ゲー要素は排除しきれない 最初はとにかく最速でリリースする事を目標に技術選定する 開発計画とビジネス計画は切っても切り離せない。 コーディングに傾倒するあまり完璧主義に陥って結局リリース出来ないまま頓挫してしまう個人開発者は多い

By Takuya Matsuyama
子育て中の個人開発者の一日

子育て中の個人開発者の一日

子育て中の個人開発者の一日 どうもTAKUYAです。 久しぶりに生活まわりの事を書きたい。自分はInkdropというMarkdownノートアプリを売って生きている。 子供も無事順調に成長しており、あと数ヶ月で3歳になるというところで、イヤイヤ期もやっと終わりが見えてきた。 生活パターンもなんとなく定着しつつあるので、ここで一旦どんなルーティンなのか書き出してみる。ちなみに当方今年で40歳。 平日の1日の流れ * 06:30 妻と子供起床、朝食 * 07:10–30 俺起床、朝食 * 07:40 布団を畳んで子供を着替えさせる。妻はその間に化粧や通勤の準備 * 08:00 ストレッチと軽い筋トレ(腕立て50回、スクワット100回) * 08:10 妻と子供を見送る。15分前後瞑想 * 08:30 散歩 * 09:00 作業開始(カフェまたは家) * 11:00 昼飯 * 12:00 ダラダラする * 12:30 作業再開(だいたい家)

By Takuya Matsuyama