一人でも出来る!ユーザを引き寄せるためのブログ術

一人でも出来る!ユーザを引き寄せるためのブログ術

一人でも出来る!ユーザを引き寄せるためのブログ術

ブログで人を喜ばせる。そのために工夫したこと。

元記事: My Blogging Tips to Attract Users for Your Niche Product

こんにちは、TAKUYAです。個人で作っているMarkdownノートアプリInkdropの課金ユーザは、お陰さまでもうすぐ1,000人に到達しそうです。こちらは最近の売上の推移です:

ほとんどのユーザは僕のブログでアプリの事を知っています。本稿では、僕がブログで集客のために工夫している点をシェアしたいと思います。もしあなたが丁度プロダクトを立ち上げようとしていたり、既にアプリを走らせているなら、きっと参考になると思います。

Inkdropはその集客をApp StoreやGoogle Play Storeなど特定のプラットフォームに依存していません。つまり自分で集客する必要がありました。でも広告は嫌いなので頼りたくありません。それがブログを書き始めた理由です。僕は今2つのブログを運営しています: 英語ブログ「Dev As Life」と本ブログ「週休7日で働きたい」です。たまにライフログ的なものも書きますがそちらは完全に趣味で、マーケティング目的ではありません。

今のところ自分のブログ戦略は上手く行っているようです。例えば去年の10月には、Hacker Newsで自分の記事が話題になりました。この記事は結果的に10万以上のビューを稼ぎました:

この結果は記事を投稿するまで全く想像だにしませんでした。他の投稿はこんなにも大きな注目を浴びることはありませんが、それでも確実にアプリの成長に寄与しています。なぜなら、そもそもこの記事が書けたのは、既に500人の課金ユーザの皆さんがいたからこそです。では、このブログがどのように集客をもたらしたのでしょうか。Inkdropのウェブサイトの流入内訳をGoogle Analyticsのデータから引用してお見せしたいと思います。

過去6ヶ月間のウェブサイト流入内訳

31%が検索エンジンからです。しかしGoogle Search Consoleを見ると、そのうち88%の検索クエリは「Inkdrop」です。つまりGoogleで検索する人の大半は既にアプリの事を知っているようです。SEOは最低限しかやっていません。

次に、43%のトラフィックはリフェラルです。どこから来ているのでしょうか?

リフェラル流入の内訳(過去6ヶ月間)

半分の流入が僕の2つのブログからです。ご覧いただいた通り、僕のアプリのユーザ獲得経路は、広告にお金をかけず、ほとんど自分のブログに依存しています。

では、具体的にどのようにブログを書いているのかご紹介します。

ブログではどんな事を書くのがいいでしょうか?本ブログを見ていただけると分かりますが、自分の経験に基づいて何かを教える内容が中心です。直接アプリについてアピールするのではなく、例えば自分のプロダクト開発経験から言えるアイデアの出し方や成長戦略などを語っています。これは人を集める良い方法です。なぜなら何かを教えることは、あなた自身の信用を高められるからです。

例: 自家製コーヒー豆を売りたいとします。これはコーヒーマニア向けのニッチ製品です。あなたはそのコーヒー豆を作るまでに学んだことを惜しみなくブログに書き連ねます。それは他のメーカーだけでなく顧客にとっても面白いものです。そのブログには困難を乗り越える様子や、人間関係、そして知見があります。読者は、いかにあなたが真剣に取り組んでいるかを記事を通して知ります。するとその一部の人たちは、あなたや製品にも興味を持ち始めます。

個人プロジェクトはあなた自身と強い繋がりがあります。製品を通じた自分の経験を語ると、製品もそれに応じて面白く映るようになります。あなたのストーリーは製品の一部という訳です。

個人開発ではブログの他にもやる事が沢山あります。アプリを開発しながらブログを毎日更新するのは並大抵のことではありません。なので、各記事で一過性のアクセスを求めるのではなく、継続して自分の記事を楽しんでくれる読者を作ることが重要です。なぜなら彼らはブログや製品を口コミで広げてくれるからです。それがウェブサイトへの安定的な流入を作り出します。実際僕はこの一ヶ月間このブログを更新しませんでしたが、新規ユーザの伸びはほとんど変わりませんでした。

継続的な読者を作るために、記事を書く際には以下の点に気をつけています:

  1. なぜあなたの記事を読む必要があるのか説明する
  2. 結論を先に書く
  3. PVではなく、しっかり読んでもらうことを主眼とする
  4. 永久保存版のつもりで書く
  5. いい文章はいいコードから学ぶ
  6. 誰かをわざわざ否定しない

それぞれ詳しく説明して行きます。

ケーキを食べるネコさん

人々は時間を無駄にしたくありません。彼らは忙しいのです。なので、あなたの記事が時間をかけて読む価値があるのか、出来るだけ早く知りたがります。

記事の主題について書き始める前に、まず自己紹介をしましょう。大半の人はたまたまSNSやウェブ検索で見かけて訪れただけなので、あなたの事なんて一切知りません。

現にあなたが今この記事を読んでいる理由は、僕が冒頭で述べた実績を見て信用して下さっているからだと思います。もし人に記事を読んで欲しいのなら、最初に自分が達成した事柄を書いてください。もちろん、それは本題と関連している内容です。野球のバットの振り方を語る前に料理が得意という話なんてしませんよね。

繰り返しますが、読み手はとても忙しくてせっかちです。とにかく早く、その記事から何が得られるのかを知りたいと思っています。記事を最後まで読んで欲しいからといって、結論を後回しにしたり隠したりしないで下さい。でないと読者は退屈してしまいます。彼らは結論が面白ければちゃんと最後まで読んでくれます。だから心配しなくていいです。

以下のような見出しは全くおすすめ出来ません:

  1. 背景
  2. 問題点
  3. 解決方法
  4. 結論

退屈です。これらには何も意味が込められていないからです。節を区切るぐらいしか役割がありません。ブログは大学の小論文とは違います。いい見出しは、その節で要するに何が言いたいかを簡潔に表わしています。すなわち、結論です。

ベストセラーの本を見れば見出しの重要性が理解できます。本の目次を見るだけで、その本の要点が理解できます。分かりやすい目次は、情報としての質を上げるだけでなく、読者の興味を掻き立てます。同様に、良い記事の見出しは、読者がスラスラと読み進められるように促進します。

あなたはプロのブロガーでもライターでもありません。開発者です。なのでページビューの数字を追う必要はありません。目的は広告をクリックさせることでは無く、ユーザを集める事です。あくまで記事を読ませることに集中して下さい。

記事のタイトルで、以下のような釣り文句(clickbait)や箇条書き(listicles)は使わないで下さい:

  • “アレを取り入れただけでアクセスが3倍に!その方法とは?”
  • “読ませるブログに必要な実践すべき10の法則”

あと、「最強のプログラミング言語とは」といった論争を巻き起こすような答えのない話題を取り扱うのもオススメしません。これらはとにかく記事を開かせることを目的としたタイトルです。

単純に事実を語りましょう。例えば、“React Native製アプリのクオリティを上げるために工夫した事” というように。

ブログのアイデア枯渇を恐れる人が、ブログ初心者に多く見られます。心配しなくていいです。記事を書くほど、アイデアは湧いてくるものです。なぜなら一度ブログが習慣になれば、常にブログのネタについて考える癖が付くからです。もし何かを達成したら、すぐさま次の記事のネタになるでしょう。惜しみなく知っていることを書いて下さい。

記事をいくら読んで欲しいからと言って、「パート1」「パート2」のように記事を分けて出し惜しみするのはオススメしません。それは人を喜ばせる方法ではありません。ウェブマガジンや新聞のように、とにかくバズらせて大きな数字を追い求める人がやる事です。今話題に登っているからという理由で記事を読みに来た人は、次の話題が来たらすぐに外へ離れて行ってしまいます。そういう人たちはあなたの製品に見向きもしません。だから、とにかく自分の経験を語ることに徹底して集中して下さい。それが読者との関係性を作り上げます。

いい文章といいコードの間には多くの共通点があります。コーディングで気をつけている点を文章にも適用すれば、読みやすい記事が書けるでしょう:

当然、何かを分かりやすく教えるためには、ロジカルに伝える必要があります。

「〜だと思います」「〜な感じがします」「〜かもしれません」といった言い方を多用すると、読み手はボンヤリとした印象を受けます。勇気を持って言い切って下さい。また、断り文句の多用も毛嫌いされます。本当にあなたは主題について詳しいのかどうか、怪しまれます。

冗長な言い方はあまり好かれません。難しい言葉を使い、凝った言い回しを使っている方は自分が賢いと思っているかもしれません。しかしそれは言いたいことを伝わりにくくしているだけです。簡潔で率直な言い方を心がけて下さい。

節の間で内容が重複するのは避けて下さい。リファクタリングが必要です。

ブログを通して一貫性のある表現方法やクオリティ、テーマがあると素晴らしいです。読者は次の記事を楽しみに出来るからです。

自分の主張を述べるのに、他人を批判する必要はありません。それは敵を作るやり方です。彼らは最悪の場合、あなたの製品を破壊するでしょう。退廃的です。

代わりに、知見をシェアすることに努めて下さい。他人なんて気にしなくていいです。自分が好きになってくれる人を集めましょう。彼らは記事を読むだけでなく、活動を支援してくれます。

一番大事なことは、ブログを書き続けることです。最初から沢山の人に読んでもらえるなんて滅多にありません。時間がかかるし、とても大変です。でもみんなゼロからのスタートです。だから記事の書く手を止めないで下さい。

この記事があなたのニッチ製品の集客の参考になれば嬉しいです :)

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Inkdrop v6 Canary版リリースしました — 新Markdownエディタやその他新機能盛り沢山

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Inkdrop v6.0.0 Canary版リリースしました — 新Markdownエディタやその他新機能盛り沢山 こんにちはTAKUYAです。 v6.0.0 の最初の Canary バージョンをリリースしました 😆✨ v6では、アプリのコア機能の改善がたくさん盛り込まれています! * リリースノート(英語): https://forum.inkdrop.app/t/inkdrop-desktop-v6-0-0-canary-1/5339 CodeMirror 6 ベースの新しいエディタ フローティングツールバー v5ではツールバーがエディタの上部に固定されており、使っていないときもスペースを占有していました。 v6では、テキストを選択したときだけ表示されるフローティングツールバーに変わりました。 GitHub Alerts 構文のサポート Alerts の構文が正しい色と左ボーダーでハイライトされるようになりました。 ネストされたアラートや引用にも対応しています。 また、アラートタイプの入力を支援する補完機能も追加されました。 スラッシュコマンド 空行で /

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AIのお陰で最近辛かった個人開発がまた楽しくなった こんにちは、TAKUYAです。日本語ではお久しぶりです。僕はInkdropというプレーンテキストのMarkdownノートアプリを、デスクトップとモバイル向けにマルチプラットフォームで提供するSaaSとして、かれこれ9年にわたり開発運営しています。 最近、その開発にClaude Codeを導入しました。エージェンティックコーディングを可能にするCLIのAIツールです。 最初の試行は失敗に終わったものの、徐々に自分のワークフローに馴染ませることができました。そして先日、アプリ開発がまた「楽しい」と感じられるようになったのです。これは予想外でした。 本稿では、自分がエージェンティック・コーディングをワークフローに取り入れた方法と、それが個人開発への視点をどう変えたかを共有します。 * 翻訳元記事(英語): Agentic coding made programming fun again 自分のアプリに技術的負債が山ほどあった ご想像のとおり、9年も続くサービスをメンテするのは本当に大変です。 初期の頃は新機能の追加も簡単で

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個人開発を7年以上続けて分かった技術選択のコツ

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個人開発を7年以上続けて分かった技術選択のコツ InkdropというMarkdownノートアプリを作り続けて7年になる。 お陰さまでその売上でずっと生活できている。 これまで個人開発でどう継続していくかについて「ユーザの退会理由をあれこれ考えない」とか「アプリの売上目標を立てるのをやめました」とか、ビジネス面あるいはメンタル面からいろいろ書いてきた。 今回は、技術面にフォーカスして、どう継続して開発していくかについてシェアしたい。 TL;DR * 最初はとにかく最速でリリースする事を最優先する * 迷ったら「ときめく方」を選べ * 程よいところで切り上げて開発を進める * 使っているモジュールがdeprecatedされるなんてザラだと覚悟する * 古いから悪いとは限らない * シンプルにしていく * 老舗から継続の秘訣を学ぶ * 運ゲー要素は排除しきれない 最初はとにかく最速でリリースする事を目標に技術選定する 開発計画とビジネス計画は切っても切り離せない。 コーディングに傾倒するあまり完璧主義に陥って結局リリース出来ないまま頓挫してしまう個人開発者は多い

By Takuya Matsuyama
子育て中の個人開発者の一日

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子育て中の個人開発者の一日 どうもTAKUYAです。 久しぶりに生活まわりの事を書きたい。自分はInkdropというMarkdownノートアプリを売って生きている。 子供も無事順調に成長しており、あと数ヶ月で3歳になるというところで、イヤイヤ期もやっと終わりが見えてきた。 生活パターンもなんとなく定着しつつあるので、ここで一旦どんなルーティンなのか書き出してみる。ちなみに当方今年で40歳。 平日の1日の流れ * 06:30 妻と子供起床、朝食 * 07:10–30 俺起床、朝食 * 07:40 布団を畳んで子供を着替えさせる。妻はその間に化粧や通勤の準備 * 08:00 ストレッチと軽い筋トレ(腕立て50回、スクワット100回) * 08:10 妻と子供を見送る。15分前後瞑想 * 08:30 散歩 * 09:00 作業開始(カフェまたは家) * 11:00 昼飯 * 12:00 ダラダラする * 12:30 作業再開(だいたい家)

By Takuya Matsuyama