SNSでアクティブサポートはしない

SNSでアクティブサポートはしない

SNSでアクティブサポートはしない

Text by TAKUYA

InkdropというMarkdownノートアプリを一人で開発しています。今のところアクティブユーザは800人ぐらいで増加傾向です。課金ユーザ数は先月300人を超えました。おかげさまで今年はまだフリーランスとして受託開発を一度もせずに開発に集中できています。月間売上が20万を超えてくると安心感が半端ないですね。

ユーザサポートについては過去にも書きました。

このように個人開発でもサポートは大事にしているのですが、一切やらないと決めていることがあります。それはSNSでのアクティブサポートです。どういうことか詳しく書きたいと思います。

  • アクティブサポートとはSNS上でのCRM活動のこと
  • アクティブサポートは親切の押し売り
  • アクティブサポートは非効率的
  • ユーザの居る場所を集中させる
  • Twitter好きは日本人固有の傾向かも
  • 自分がされたら嬉しいこと「だけ」する

アクティブサポートとは、Twitterなどで自分のサービスについて書いている人を見つけたら、こちらからアプローチしてサポートを提供するという手法です。能動的サポート。

困っている人を助けるだけでなく、不満の声に対して謝ったり改善要望を聞きだしたりもします。その延長線上で、口コミを広げてくださった人にお礼を言ったり、イイネやリツイートをすることもあります。要するにCRM(Customer Relationship Management)をSNS上で積極的にやる活動のことです。うまくやれば顧客との良好な関係性を築くことが出来ると言われています。

この手法は既に多くのサービスが取り入れています。サービス用のアカウントを開設して、エゴサーチをして、メンションを送る。特に疑問も持たず、やるのが当たり前だと思っている人も多いのではないでしょうか。単純に自分のサービスについて呟いてくれているのが嬉しいから絡んでいるというのもあるかと思います。それが開発のモチベーションに繋がったりしますよね。

一方、ユーザ側はどうでしょうか。僕はアクティブサポートを受けて、個人的にあまり嬉しかったという経験がありません。なんだか自分が見張られているような気分になるからです。有益なアドバイスをもらっても、余計なお世話だよ、放っといてくれ、と思ってしまいます。ひねくれていますね(笑) また、褒めるツイートを公式アカウントにリツイートされた時は、なんだか宣伝の材料に使われたみたいで少し嫌な気分になりました。

これらは完全に自分の性格によるものですが、こういう人間が一定数いることは確かなのです。言い方は悪いですが、アクティブサポートは親切の押し売りです。必ずしも万人が喜んでくれるとは言えないサポート方法です。

自分のアプリ開発のポリシーは「自分のほしいものを作る」です。なぜなら自分は特別でも何でもないからです。自分が欲しいと思うなら他にも同じ人が一定数以上いるはずです。同様にユーザサポートのポリシーは「自分がしてほしいことをする」です。逆の言い方をすると「自分がされて嫌なことはしない」です。理由は同じです。

アクティブサポートは自分がされて嫌なことです。これが、自分がアクティブサポートをしないと決めた最も大きな理由です。

前述の通り、ユーザはサービスの事を呟いたからと言って必ずしもサービス側からの反応を求めているとは限りません。現に、他サービスがリプライをユーザに送って無視されているところを頻繁に見かけます。これはコスト面で言って非効率です。ただでさえ一人で開発運営していて、貴重なマンパワーを不確実性の高いものに注ぎ込むのは有効とは言い難い行為です。心理的なストレスもかかります。

SNS、とりわけTwitterはユーザサポートに向かないメディアです。ユーザはなんとなく呟いているだけだったりするので、具体性に欠けます。文字制限もあり、コミュニケーションは円滑とは言い難いです。ユーザは別に自分からサポートを頼んだわけではないので受け身姿勢になる傾向があります。更に、Twitterでは履歴が流れてしまうので他のユーザさんが後で参照するといった事が出来ません。

アクティブサポートが自己満足になっていないかも注意する必要があります。サービス開発者としては、SNSでサービス名で検索すると賞賛の口コミで溢れていて欲しいものです。そこに否定的な声が混じっているとつい声をかけたくなります。不満や批判は目立ちますが、少数派であることがほとんどです。満足している人は基本的に何も言いません。不満をすべて消すことは不可能です。誰に向けて作っているのかを思い出してください。

ネットにはTwitterだけでなく沢山のSNSがあります。RedditやHacker News、Product Hunt、GitHub、Instagramやfacebookなどなど。すべてのコミュニティでアクティブサポートをするのは実質不可能でしょう。毎日クロールして新しい書き込みがないか確認して、関係のない検索結果を一生懸命フィルターで除外して、その労力に一体どれだけの意味があるのでしょうか。

SNSでは作者を意識せず自由に賛否の評論をしてもらいたいです。だから僕は1年前からイイネもリツイートも一切していません。

ユーザは作者がいる場所に集まってきます。コミュニティを盛り上げるにはユーザを一箇所に集約するのが効果的です。しかし作者がいろんな場所にいると、コミュニティは分散します。アクティブサポートをやめる事には、コミュニティを集約するという目的があります。ここに行けば仲間がいる、という場所を作るのです。

Inkdropでのサポート本拠地はフォーラムです。Twitterとは違い、フォーラムでのやり取り履歴はFAQ代わりにもなり、他のユーザさんの助けになります。自分の他にも使っている人がいる、という事が可視化されることで安心感や仲間意識をもたらします。

最近の投稿でとてもいいなと思ったバグ報告をご紹介します:

…(snipped)…That said, this is a really minor annoyance to me (I don’t mind it much), but I couldn’t find anyone else reporting it before me, so ¯\(ツ)/¯ — Aleksandar…(中略)…とは言え、自分にとってはそんなに気にならないマイナーな問題だけど他に投稿してる人が見当たらなかったから ¯\(ツ)/¯ — アレクサンダルhttps://forum.inkdrop.info/t/when-exporting-a-note-with-code-blocks-to-a-pdf-page-break-gets-inserted-mid-line/377

些細だけど問題を見つけたからとりあえず投稿しておいた、というのです。ただ自分が困ったからというだけでなく、コミュニティ全体の利益を意識した発言で感銘を受けました。

もしサポートの場がRedditやTwitterにも分散していたら、このようなコミュニティ意識は醸成されなかったと思います。助け合いの場として今後も更に発展させていけたらと思います。

また、Inkdropでは(そもそも数が少ないのですが)サービスについて呟いている人はほぼ100%日本人です。全体の約半数を占める外国人ユーザは、何か言いたいことがあれば直接メールやフォーラムに気軽に連絡をしてくれます。

日本人はTwitterが大好きです。MastodonというTwitter代替サービスが一時期話題になりましたが、それでもやはりTwitterはまだまだ現役のメジャーなSNSです。だから自分がやんわりとつぶやけば作者に届くだろうと期待するのは自然なことです。たとえ直接的な反応を求めていなくとも。問い合わせるほどの事ではないけど、何か言いたいという気持ちのちょうどいいはけ口になっていると思います。Mastodonでわざわざ作者にエアリプする人はいないでしょう。

一方、英語圏はいろんな国や文化が交じり合うので、言わなければ伝わらないという意識が強く感じられます。英語の言論空間は広いので、その内の1つであるTwitterでエアリプしたところで作者が見ている見込みは低いと考えているのでしょう。何か言う時は明示的に @メンション を付けます。

ではTwitterを好む日本人の傾向に、自分は合わせるべきなのでしょうか?僕はそう思いません。先に述べたとおり、アクティブサポートは自分にとって「されて嫌なこと」です。コストの問題もあります。ただでさえ限られたリソースの中、あれもこれもと手を広げて中途半端にするよりは、「されて嬉しいこと」に集中するほうが良いと判断しました。

例外として、エディタのシンタックステーマを作ってくださったユーザさんのつぶやきをリツイートした事があります。

こういったユーザコミュニティの活動と呼べるものは積極的に評価をして盛り上げていきたいです。

もちろん、日本人でも積極的にフォーラムに投稿してくださる人たちがいます。僕は彼らを満足させることに注力したいと思います。日本語でも投稿できますので、お気軽に投稿ください。

ユーザサポートは対人コミュニケーションなので人によって意見が分かれる代物です。この記事を読んで反対意見を抱く人もいるでしょう。

一つ言えるのは、自分がされて嬉しいことには自信が持てるという事です。迷いません。アイデアも湧きやすい。みんなやってるから、誰かが大事だと言っていたから、なんとなく半信半疑でやる。それよりもずっと効果的です。もちろん、新しい方法を試すことも時には大事ですよ。

すべての人を満足させようとすると、結局誰も喜ばせられません。顧客を選べば、顧客からも選ばれます。ユーザサポートでもそれを実践していきたいと思います。

以上、あなたの個人開発の参考になれば幸いです。

使ってね!

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