個人開発で日本から海外へ、10年間の歴史 — ひろしさんとの対談(前編)

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個人開発で日本から海外へ、10年間の歴史 — ひろしさんとの対談(前編)

数週間前、ひろしさんのポッドキャストにゲストで出演しました。お互いの長い個人開発の経験について語り合いました。英語版を作成する過程で、日本語でも綺麗に整形した書き起こしが出来たので、こちらに掲載します。お楽しみください。

※ギアアイコンをクリックして、音声と字幕を日本語に変更できます。

00:00 イントロ:TAKUYAさんようこそ
01:32 TAKUYAさんの自己紹介:WalknoteからInkdropまで
04:54 独立への踏み切り方:慎重派と勢い派
06:51 個人開発がフリーランス案件につながった
09:17 Inkdropで食えるようになるまで
12:15 なぜ最初から海外市場を狙ったのか
14:54 AI登場前、英語コピーに苦戦した話
16:18 AIバイブコーディング時代をどう見ているか
17:24 全てのコードを一行ずつレビューする使い方
21:06 AIは新幹線:速さの先にあるもの
25:53 AI時代に「感性」が大事になる
27:07 一汁一菜:AI時代をどう生きるか
29:05 技術の変化を季節のように楽しむ
30:58 群れから離れて、ユニークさを保つ
35:14 ネットの批判への向き合い方
36:33 締め

イントロ

ひろし: はい、こんにちは、こんばんは。個人アプリ開発者のひろしくりえいしょんです。今日もスペシャルなゲストの方に来ていただいています。InkdropのTAKUYAさんです。よろしくお願いします。

TAKUYA: お願いします。ひろしさんが脱サラしたって聞いたんで、これは応援せずにはいられないだろうということで駆けつけました。

ひろし: ありがとうございます。僕とのつながりは、5年前にTAKUYAさんのブログに僕が寄稿したのが最初ぐらいですかね。

TAKUYA: もうそれよりずっと前からね、お互いフォローしてて活動を見にいってて。当時は『ファミリーTODO』、今の『minto』をずっと作ってて、それが1万人ユーザーいったというのをきっかけに、ブログにちょっと書いてみませんかって俺から誘ったのがきっかけですね。

ひろし: ああ、そうでしたね。そこからのお付き合いなんですけれども、個人開発されている方は皆さんご存知かと思うんですが、一旦TAKUYAさん、自己紹介をお願いしてもいいですか。

TAKUYAの自己紹介:WalknoteからInkdropまで

TAKUYA: はい、TAKUYAです。Inkdropっていうマークダウンに特化したノートアプリをかれこれ10年作ってまして、元々はYahooで新卒として働いて、1年半で辞めました。働いてる時にもうずっと個人開発してて、そこで作ってたのが音楽アプリでWalknoteっていうiOS、当時はiPhone OSやけどの音楽アプリ。それが取り上げられてヒットして、その勢いで会社辞めて、「妄想のアプリで食ってくぞ」みたいな勢いで、ほんま何も考えずに飛び出して。結局Walknoteはマネタイズは失敗したんですけど、ユーザーは13万人ぐらい集まって。

ひろし: すごい。

TAKUYA: ランキングの上位に入る感じでいい感じだったんですけど、マネタイズまで考えんとやってたから上手くいかず。これは諦めて、その後にいろいろ作って全部失敗して、最終的に「もうちょっとノートアプリ欲しいから作ろう」ということで作り始めたのが、今のInkdropですね。

ひろし: あー、そうなんですね。

TAKUYA: それまでいっぱい失敗してきて、Inkdropをいきなり作って成功したという感じではないですね。

ひろし: いや、そうですよね、そこですよね。人ってこう、成功してるアプリのところしか、光の部分しか見ないですけど、その前にも結構作ってたんですね。

TAKUYA: 個人開発で言うたら、それこそ高校生、中学生くらいかな、プログラミング始めた頃からずっと個人開発してるみたいな感じだから、プログラミング歴イコール個人開発歴みたいな感じですね。

ひろし: すごいな、大先輩じゃ。minto期で言うとInkdrop何年ですか、10年以上ですか?

TAKUYA: ちょうど10年、今年でアニバーサリー。おかげさまで続いております。

ひろし: 大先輩と今回はいろいろお話してみたいと思います、ありがとうございます。mintoはあともう少し、1ヶ月で7年目、7周年です。7年も結構いきました、確かに。

TAKUYA: え、7年は長い。

独立への踏み切り方:慎重派と勢い派

ひろし: でも僕の場合は独立がもうめちゃくちゃ遅かったんで、6年半ぐらいはずっと会社員の傍ら副業でやってたので、歩みとしては本当に亀みたいな歩みです。

TAKUYA: それはマネタイズとか生活費を稼げるかどうかの兼ね合いみたいなところですか? 踏み切る分かれ道はどうでしたか?

ひろし: いやー、例えば金融公庫とかから借金してええいやってやる人もいますし、TAKUYAさんも最初そうだったかもしれないんですけど、僕の場合は結構石橋を叩く感じで、ちゃんと売上立ってから独立しようってなってました。それがあって結構6年半かかっちゃいました。

TAKUYA: 全然いいと思いますね。でも俺の場合、本当に何も考えてなかったから、若気の至りで辞めた後に「お前大丈夫か」って友達から電話かけてきたくらいだから、おすすめはしないですね、全然。ただ、そこで死なないで済んだのは、さっき言ったWalknoteってアプリが実績になってくれてたからっていうのが大きくて。当時本当にね、iPhoneの市場がすごい盛り上がってて、Facebookがものすごい勢いで、みんなマーク・ザッカーバーグを目指すぞみたいな雰囲気だったんだけど、その中で「クオリティの高いiPhoneアプリを作れるやつがおるぞ」ということで、口コミ、っていうか友達経由で紹介してくれて、知り合いのスタートアップから仕事をもらえたり、ちょっと大きめの会社からもデザインの仕事をもらえたりとか、そういうつながりがあった。だから個人開発そのものが自分のフリーランスとしての仕事に繋げてくれたという側面がすごい大きい。直接マネタイズじゃないけどお金を稼ぐ手段として、個人開発の作品が大きく役に立ってくれた、というのが大きい。

ひろし: 確かに、当時はiPhoneアプリを作れる人も少なかったですよね、おそらく。「これどうやってやるの?」みたいな、聞かれるぐらい。

TAKUYA: うん、確かに。作っとけばそれで仕事につながるんで、死ぬ心配はないよって。別にそのアプリそのもので成り立たせることにこだわらなくてもいい、食っていくためには。辞めるかどうか悩んだ時にフリーランスとして繋ぎつつ続けるのも一つの道だよと。

ひろし: ああそうですね、確かに、0か1じゃなくて、普通に個人アプリ売れなかったら業務委託すればいいし、なんなら別に社会人に戻ればいいし、サラリーマンエンジニアにって考えたら、そんなリスクないですよね。スキルがあるから十分だし、このmintoだってもう名刺代わりになるからね。万が一これで食えなくなっても、「これ、こういうものを作れるんです」ってもうみんな知ってるし、仕事もどんどん来る。

TAKUYA: うん、あとその技術的なことだけじゃなくて、個人アプリを売り上げたっていう、そのマーケティングの軸が普通の人とずれてないところとか。あと、僕もひろしさんもデザイン自分でしてると思いますけど、そのデザインがある程度勘所のあるフロントエンドのエンジニアであるっていうこととか。そういうところはいちいち面接で説明しなくても、「これ作ってます」って言えばもう分かりますもんね。説明したことない、俺。「PHP歴何年、JS歴何年」とか、そんな説明したことない。「このアプリ作れます」って見せただけで、結構簡単に仕事は来る。「ああそうなんですか、実はうちはこんなのを考えてて」っていう感じで話がすぐ進む。

Inkdrop専業になるまで

ひろし: いつだったかな、ブログに書いてましたよね。

TAKUYA: リリースして1年は全然食えなくて、2年目くらいで「家賃の半分、家賃をまかなえるようになりました」みたいなブログを書いて、3年目くらいかな、で完全に食えるようになったと思う。

ひろし: はいはい、そっからはもうInkdrop一本で?

TAKUYA: そうですね、基本はもう受けてなくて。1回だけ、オーストリアのReact NativeデベロッパーのMarc Rousavyっていう友達がおって、彼がエージェントの会社をやってて。「デザイナーおらんかって、できるやろ、やってくれへんか」って言われて、「じゃあ動画のネタにしていいんやったらやっていいよ」って言ったらOKくれて。YouTubeのネタにしつつ受け負ったっていうのが最後かな。

ひろし: なるほど、じゃあもうほぼInkdropですね。

TAKUYA: なんか面白い、もうすごい面白い案件があったら別にこだわらずにやるよっていうスタンスで。それはオーストリアの会社で、海外の案件を受けるっていうのも初めてで面白かったし、動画のネタにできるっていうのも面白いし、お金になるから。3拍子揃ってたから。

YouTubeと「日本にこだわらない」スタンス

ひろし: TAKUYAさんはあれですよね、YouTubeをやられていて、VlogとかDevAsLifeで、今もうユーザー数20万人超えてましたっけ? 結構すごいですね、登録者数21万人。

TAKUYA: 2つチャンネルがあって、DevAsLifeがメインで21万人で、もう1個がトーク中心、英語のベシャリを上げるために始めたやつが今2万人。

ひろし: すごっ。じゃあ銀の盾もあるんですか?

TAKUYA: うん、ある。最近はDevAsLifeよりこっちのセカンドチャンネル(craftzdog)のトーク中心の方をよく上げてる。

ひろし: それは英語で発信を常にしてて、Inkdropも主体は英語だからなんだと思うんですよね。日本というよりは、活動の全般が日本を飛び越えて海外になってるじゃないですか。僕も最近のテーマは「安い日本から外貨を稼ぐ」っていうのをテーマにしてるんですけど、それを相当早い段階、10年前ぐらいからやってると思っていて、なんで海外を市場にしてマーケティングしてるんですか?

TAKUYA: 日本に限る理由がないからですね、最初に。ノートアプリだし、なんで日本だけで売らなあかねんって。まず疑問ですよね。開発を通してオープンソースによくコントリビュートしてたっていう経緯があって、海外っていうのはそもそも自分の生活の中でとても近くにあった。

ひろし: なるほど。

TAKUYA: イシュー立てたり、PR送ったり、それらを英語で普段からやり取りしていて、海外の開発者っていうのがもともと身近にあったんで。Inkdropを考えた時に「これは開発者向けだから、自分の身近にいる開発者、つまり英語圏の人たちをターゲットにする」んだったら、英語でやらないっていうのはない。自然な流れでそうなった。

もちろん、日本は今後10年20年で経済圏が縮小していくというのは分かり切っているけれども、それを念頭に置くというよりは、要は売りたいものを考えるときに「自分はどんなものを買うか」と考えて、「自分は売りたい相手は誰だ」と考えた時、それは身近な人ですね。自分に似ている、自分が理解しやすい人物。それは身近な英語圏の開発者たちっていう風な流れで考えてたら、英語で作ろうという風になりました。

ひろし: なるほど、じゃあ自然だったんですね。「英語圏に頑張ってやろう」というよりかは、オープンソースの活動の流れとして、海外が自然な流れだった。

TAKUYA: そう。もちろん英語力は全然なかったから、ブログ一本書くのに2週間かかったり、ウェブサイト作るのにいろんなサイトからコピー文を切り貼りして取ってきて組み立てたりとか。コピーを英語で考えるのはめちゃめちゃムズかった。本当に直訳しかなかったから、翻訳もいい感じにならないですよね。だから自分が普段使ってるアプリのホームページを全部見て回って、「これは使えるフレーズ、これは使えた」っていう風にピックアップして集めて切り貼りして作ってましたね。懐かしい。

ひろし: いやすごいなぁ。今だと海外のサイト作ろうとか海外にサービスを売ろうと思ったら、「AIで翻訳すればOKっす、楽っす」って感じじゃないですか、質は置いといて。

AIバイブコーディング時代をどう見ているか

ひろし: 僕の中のTAKUYAさんの印象って、AI以前からもうバリバリ個人開発やってるし、個人開発者の中でも相当技術力高いと思うんですよね。もともとオープンソースに貢献してたりするし、Electronの性能、アプリのチューニングとかできるし。そういうTAKUYAさんが今、AIバイブコーディング時代のことをどう思ってるのかなっていうのを聞きたいですね。

TAKUYA: めっちゃ楽しいですね。これについては最近のブログのネタにもしてて、AIを避けるのは不可能なぐらい浸透してます。ほんまになんか、新卒じゃないな、もう新卒を超えてる感じはするな、スキル的にAIのね。

ただ、自分の使い方としては、二極化してるのかな。もうAIに全て任せて、自分はAIが書いたコードを読まないっていうタイプの人、すごい極端なタイプの人と、自分はAIのチャットだけしか使わないというタイプ。結構こんな感じのグラフになってる気がするんですけど、自分は真ん中らへんにいて、AIが書いたコードは基本的に全部一行ずつ見る、レビューして、「よし」ってなって初めてコミットするっていう使い方をしてる。

なぜなら既に使ってお金を払ってくれたユーザーがいるプロダクトに、そんな無責任なコードが入れられないんで。最終的に自分が責任を持っているものを出すためには、必ず全部一行ずつレビューしてやるようにしてる。だから大量のエージェントを10とか20とか動かして、ものすごいスピードでいろんなものを作るみたいな使い方はしていない、今のところ。必ず1個ずつ見てますね。

ひろし: いやー、分かりますね。僕、最近新作作ってて、新作はユーザーいないからもう破壊的な変更がし放題なんですよね。でもmintoを使ってるとき、作ってる時は、もうすでに人間が書いた、僕が書いた何千行、1万行ぐらいのコードがあるし、既存ユーザーいるから、本当にこう一行一行手が抜けない。一方で今の新作は本当にもう9割ぐらいAIに任せてて、一応レビューはするんですけど、結構もう半自動運転、7割自動運転ぐらいですね。

TAKUYA: 既存のサービスを既に自分の手で書いてて、ユーザーがついてると、まだAIに任しきれないなっていう感覚はすごい分かります。新しい、まったく1から作るってなった時にAIに関わせていたら、確かに書くコストがほとんどないから破壊的変更も躊躇なくできるっていうのはすごいイメージできる。例えば新しいウェブページ、ランディングページを作ろうってなった時に、間違いなくAIを使うと思うけど、その時の試行錯誤の過程ではバンバン書いたコード捨てていくと思う。すごい勢いでPDCAを何周も回して、ちょっとずつ形に近づけていくっていうやり方になると思う。

これは画像生成に似てる。ウェブサイトをAIで作るって時に、一回一回全部最後まで作らせて「これのここが気に入らん、再生成、再生成」って、画像生成とすごい似てるよね、そのイメージ。

ひろし: ワンマン社長のやばいクライアントしかそういうことできなかったけど、今は個人単位でできるって感じですね、それが。

TAKUYA: うん、それでいいやり方なのかどうかまだ誰も分からない。

AIは新幹線:速さの先にあるもの

TAKUYA: 結局、細かいところまでちゃんと気を配ろうと思ったら、そのやり方だと限界がある。前にブログで書いたんだけど、AIは新幹線のようだっていう話があって、要するに大阪から東京まで行くのはものすごいスピードで行けるけど、具体的に例えば浅草行きたいとか、自分が前住んでいた光が丘公園にもう一回行きたいってなったら、ローカルの電車に乗り換えて、タクシー乗ったりバス乗ったりとか、細かい手段の切り替えが必要になってくる。

だから細かいところに行きたい場合、具体的な場所に行きたい、何か具体的なことがしたいっていう風に詳細を詰めていくには、AIに任せるのは限界がある。大阪から東京に行く時も景色はものすごいスピードで流れていくから、その過程が全く見えなくなるよね。なんか使ってて頭がボーっとするのはそれが原因だと思うけど。

ひろし: あ。

TAKUYA: 「実は東京に着きました、品川に着きました」、そこからどうやって行くかってなったら途端に景色が見えるようになって、「こんなところにこんな建物新しく建ったんだ」とか、そういう変化も気づけるようになる。今自分がInkdropで使ってるAIの使い方っていうのは、たぶんバスに乗るとか、タクシーに乗る、あるいはどの建物が建て替わったのかとか、そういう類の、見える世界での使い方をしている。

ひろし: じゃあまあ、まず新幹線で一回いろんなところ行ってみて、飛行機で行ってみて、「ああ、このデザインスタイルは合わへんな」とか、ドイツとかオーストリアスタイルとか、いろんなところ巡って、ピンとくるものがあったら、そこから具体的に「建物の具体的なスタイル、窓のこの感じをリプロデュースして」、そういう指示の出し方になってくる。

TAKUYA: ああそうですね、確かに。頭ボーっとする感覚はすごい分かる。読んでられないですよ、もう速度が速すぎて人間が追いついてないです、完全に。読む気がなくなるよね、早すぎて。

ひろし: だから指示として、例えば「ここに見えている時計をちょっと形を変えて色を変えて」みたいな指示の単位で、今TAKUYAさんは多分やられているような感じでAIに指示すると、1行1行を見て「この色ダメだよ」ってできるんですけど、ざっくり本当に、自分の実現したい世界観もまだイメージついてない中で曖昧な指示をすると、本当にもう見てられない。

TAKUYA: 最近試したフロント集があって、ウェブサイトのデザイン用にいろんな有名な企業のランディングページを分析してそれをマークダウン化したというのがあって。design.mdっていう、これか、Awesome DESIGN.mdっていうやつで。これを一回試して、いろんなサイトのスタイルを1個1個自分のウェブサイトで試してたんだけど、そのまんま使えるクオリティではなかった、残念ながら。フレーム構成、ページ構成とかレイアウト、配色とかだけしかレプリケートしてくれなくて、自分のアプリのコンセプトに上手いこと混ぜてくれたりはしない。ちょっとね、やっぱ違うなって思った。

AI時代に「感性」が大事になる

ひろし: そのなんか違うなーって感覚とか、自分の作家性、TAKUYAさんならではの世界観があると思うんですよね、Inkdropにしても日々のブログにしてもイラストにしても。そういう感性が、僕はAIの時代に大事な気がしてて。じゃないと判断がつかないからですね。いいデザインかどうかとか、あと一歩足りないかどうかっていうのは感性が磨かれないと判断ができないと思うんですよね。そのままAIの出力通りに身を任せると、似たようなデザインとかアプリになると思うんですけど。なんかそういう感性を磨く中で、最近やられてることとか、AI以外でパソコン以外で何かやられてることあります?

一汁一菜:AI時代をどう生きるか

TAKUYA: ちょうど昨日Vlogとブログ記事を上げた内容がまさにそういう内容で、「AI時代にどうよりよく生きるためにはどうしたらいいのかな」っていうのをテーマに議論した話なんだけど、それのインスピレーション元が一汁一菜で、土井(善晴)さんの話で。

インターネットに接していると、アルゴリズムにまみれてしまう。Twitter、Xを開いてもドラマやゴシップにまみれて、それに注意を引かれてしまう。そういうのって食べ物に例えると添加物で、別になくても生きていけるものだと。そういうものをどんどん引き算していって、必要なものだけを残すようにして、生活のリズムを保ちましょう、というのがまず一つ。

二つ目が、有機的なつながりとかアイディアを大事にしようっていう話で。ランダムな、例えばよく行くカフェで店員さんが話しかけてくれて、それでちょっとほっこりするみたいな、そういう出来事とか。毎朝会うママとの雑談とか、公園でよく会う子供とちょっと遊ぶとか、そういう、誰かが設計したものではないつながりを大事にする。アイデアで言うたら、パソコンの前で画面と睨み合いするんじゃなくて、それを置いといて散歩に出かけるとか、キャンプに行くとか、車で出かけるとか、そういう離れる時間を作ったりすると、パッといいアイデアが浮かんできたりする。

ひろし: ああ、ああ。

TAKUYA: あと、技術の変化を季節の変化のように楽しむ。

ひろし: おぉ。

TAKUYA: 毎日新しいAIなんたら、なんたらエージェントとかいっぱい出てきて、それをキャッチアップするのは大変だ。誰かと競う、競い合うように毎日毎日過ごすんじゃなくて、「春だから桜が綺麗だよ」とか、「りんごが旬だからちょっと食べようや」とか、「サンマ大好きだから秋が楽しみだな」みたいな。追っかけるわけじゃなくて、その来たものを、季節季節の来たものを、アプリシエイトする、楽しむ、ありがたく頂戴する。そういう気持ちで技術と接すると、力が抜けて必要な部分だけ必要に応じて取り込んで、自分の中に取り込んで、醸成していく。これが自分のペースを保つのにいいんじゃないかなと思って。

トレンドばっか追いかけるんじゃなくて、自然体に、有機的なつながりの中で接する機会があれば、まあ取り込んでもいいんじゃない、みたいな。そういうペースで送っていけば、ユニークなアイデアがおのずと浮かんでくるんじゃないかなと思って。

群れから離れて、ユニークさを保つ

ひろし: そうやからね、群れの中にいるのと同じで、全くユニークさが生まれないよね、トレンド追いかけてる限りよ。他の人がすでにやってることの真似してるだけだから、そこでユニークさが生まれる要素がない。だから人と違うことしないと、新しい動画のフォーマットも思いつかないし、ユニークな視点の記事も書けない。

一汁一菜を基にしたAI時代の生き方を英語で発信するのは誰もやってないんで、少なくともこれはユニークだと思いますね。僕も昨日ブログ読んだんですけど、「あんな味噌汁類がAIに結びつくわけがない」と思ってたら、めっちゃ結びついてたし。土井善晴さんの本もめっちゃ深い内容だったんだなって、その時知りました。

TAKUYA: そうそうそう、ただのレシピというか、そういう提案だけにとどまらず、日本の深いルーツまで辿ってって、すごい深みのある本でよかった。だから味噌は添加物じゃなくて、もともと醸成されたり発酵してできたものであると。深みのあるものとトレンドとかXの投稿みたいな添加物は、分けて考えた方がいい。

それは全く排除する必要まではないけど、無理して排除する必要はないけど、味噌とかご飯のように毎日食べても飽きないようなものを自分の中に持つと、それが軸になって安定する。毎日ギター弾くでもいいし、ドラム叩くでもいい。自分の場合はドラム叩くと、すごいなんか元に戻れるというか、そういう感覚になれる。そういうのは個人開発とも全くつながりがないように見えるけど、やっぱり大事なんだと思う。

ひろし: ほう。

TAKUYA: 技術界はもう結構閉じてるでしょ。タイプの似た人が多いじゃないですか。そうすると、なかなか自分はその輪に入って馴染めなくて。学生の頃からだけど、固定のグループに入るとなぜか不安を覚えるっていう性格で、技術界隈も英語圏も一緒で、同じ人とつるんでたらなんか途端に我に帰って「俺、これでいいのかな」っていう気持ちになってずっと属することができないっていう性質があって。

ひろし: はい。

TAKUYA: これでいいと思うんだけど、その反面、孤独はずっと付きまとわれるんだけど、同一な人とずっとつるみ続けないのは、一つの自分をユニークにする要素なのかなと。

ひろし: いやすごい大事。前回のゲストの小さんもおっしゃってましたね、同じようなこと。「人と似たようなことしても仕方ないでしょう」みたいな話で、あえてそういうコミュニティと別のところに行ったりとか、小さんはそういう話してましたね。めっちゃ面白い、最高ね。そういう人大好き。

ネットの批判への向き合い方

ひろし: 最近TAKUYAさんの投稿でも見かけましたけど、海外でも、例えばDevAsLifeとかサブチャンネルの投稿をすると、「OpenCodeなぜ使ってないんだよ」みたいなコメントが来たりとか。そもそもClaude CodeとかAIエージェント使ってる時点で上位の0.何%なのに、その中でまた競い合って0.000何%をマウント取り合うみたいな状況って、海外でもあるんだなっていうのが、結構見てて面白かったですね。

TAKUYA: めちゃめちゃある。ああいうこと言ってくる人は大体匿名なアカウントで、自分に自信がない人たち。VSCode使ってて、「俺はVSCodeでいいんだ」っていう確信が持ちたいがために、VSCodeじゃない人たちを攻撃して自分を納得させるっていうタイプの人たちだから、全員無視して大丈夫。ただちょっと鬱陶しい。

ひろし: なるほどですね。なんか村だなと思いました。村にずっといて、その言葉に振り回されちゃいけないんだなと思いましたね。

TAKUYA: まあ他人を否定する必要はないよね。自分のやってることを肯定するために「どこに属すか」っていう以前の問題だよね。そういう人たちは、もっと自己肯定感をまず持った方が。

締め

ひろし: ありがとうございます。じゃあ一旦ここで区切って、後半はTAKUYAさんがお話ししたいことの会にしてもいいですか?

TAKUYA: はい、ありがとうございます。じゃあ、一旦こちらで区切りたいと思います。ありがとうございました。

ひろし: 失礼します。

ひろしさんのリンク

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