個人開発だからこそ出来るユーザサポートがある

個人開発だからこそ出来るユーザサポートがある

個人開発だからこそ出来るユーザサポートがある

この記事はHacker Noonに寄稿した「Personal Developer Can Beat Big Company with User Support」の日本語訳です。

個人開発者は大企業にあらゆる面で常に負ける。果たして本当にそうだろうか。大企業はその大きさゆえにとにかく遅い。でも小さなプロダクトは小回りがきく。個人開発者はとりわけユーザサポートで、大企業に勝る素質がある。

自分はフリーランスをしながらInkdropというMarkdown好きのためのノートアプリを開発している。最近、その売上で家賃の半分が賄えるようになった。アプリを購読してくださっているユーザさんもそれを喜んでくれている様子で嬉しい:

自分がどうやって彼らを惹きつけているか、ユーザサポートの観点でその方法をシェアしたい。

ユーザはサポートの返事があるまで何日も待たされることに慣れきっている。大企業のユーザサポートを受けたことがある人なら分かると思う。電話で待たされ、たらい回しにされ、数日後にやっと回答が得られる。だからメールを送信する時、すぐに返事がもらえるなんてそもそも期待なんかしない。

そんな退屈なサポートが当たり前だと思っている人にもし90分以内に返事が来たら、彼らは間違いなく驚く。彼らの不満げな態度はそれだけで180度変わる。自分はもしサポートメールを受け取ったら、その時やっていた作業を可能な限りすぐに中断して返信するようにしている。早い時は数分程度で。するとユーザさんはこう返事してくれる 。 “Thank you for the quick response”と。

もしすぐに回答できないような問い合わせが来ても、とにかく何か返事をする。明確な答えが出るまで保留にするのは良くない。だって相手はその間ひたすら待たされているんだから。つまり即レスを心がけるだけで、ユーザに確実に好印象を与えられる。

たとえ個人開発であっても、アプリは自分一人で作っているわけではない。ユーザのフィードバックがあるお陰で気付かなかったバグが直せたり良いアイデアをもらえたりする。だから、貢献してくれたユーザを称えるのは当然のことだ。もし自分の報告したバグが直って、さらに作者がその事を賞賛してくれたらすごく嬉しい。でも残念なことに、ほとんどのサービスは実践していない。なぜなら、大企業ではそれをやるにはキリがないほど沢山の顧客がいるから。

自分はInkdropの新しいバージョンをリリースした時、リリースノートに必ず貢献してくれたユーザの名前を記載するようにしている:

自分がもともと予定していた機能だろうが、既に気づいていたバグだろうが関係ない。ユーザが何かしらその改善に関わっていれば、賛辞を末尾に付記する。この手法はとても効果的。

この手法はお金がかからない上に簡単に出来る。しかも、ユーザの立場からすると自分がサービスに貢献できた証拠になる。まるでオープンソースに貢献できた時みたいに嬉しいし、周りに自慢したくなる。その上、サービス側はちゃんとユーザの声を取り入れているというアピールにもなる。

もちろんこれはユーザの声に迎合しろという意味ではない。この記事で書いたように、自分が本当に必要だと思った機能だけを検討するべきで、そう思えなければどんどん断っていい。

できない約束はしない。それは周りの人間関係でもそうだろう。ユーザに機能要望を受けた時、 “It’s coming soon..” とつい言いたくなるけど、それは本当に対応の目処が立っている時しか言うべきじゃない。誠実で友好的な態度は、ユーザがプロダクトを信じやすくしてくれる。悪意のない嘘でもつくのはやめよう。

参考になれば嬉しい。

Read more

Inkdrop v6 Canary版リリースしました — 新Markdownエディタやその他新機能盛り沢山

Inkdrop v6 Canary版リリースしました — 新Markdownエディタやその他新機能盛り沢山

Inkdrop v6.0.0 Canary版リリースしました — 新Markdownエディタやその他新機能盛り沢山 こんにちはTAKUYAです。 v6.0.0 の最初の Canary バージョンをリリースしました 😆✨ v6では、アプリのコア機能の改善がたくさん盛り込まれています! * リリースノート(英語): https://forum.inkdrop.app/t/inkdrop-desktop-v6-0-0-canary-1/5339 CodeMirror 6 ベースの新しいエディタ フローティングツールバー v5ではツールバーがエディタの上部に固定されており、使っていないときもスペースを占有していました。 v6では、テキストを選択したときだけ表示されるフローティングツールバーに変わりました。 GitHub Alerts 構文のサポート Alerts の構文が正しい色と左ボーダーでハイライトされるようになりました。 ネストされたアラートや引用にも対応しています。 また、アラートタイプの入力を支援する補完機能も追加されました。 スラッシュコマンド 空行で /

By Takuya Matsuyama
AIのお陰で最近辛かった個人開発がまた楽しくなった

AIのお陰で最近辛かった個人開発がまた楽しくなった

AIのお陰で最近辛かった個人開発がまた楽しくなった こんにちは、TAKUYAです。日本語ではお久しぶりです。僕はInkdropというプレーンテキストのMarkdownノートアプリを、デスクトップとモバイル向けにマルチプラットフォームで提供するSaaSとして、かれこれ9年にわたり開発運営しています。 最近、その開発にClaude Codeを導入しました。エージェンティックコーディングを可能にするCLIのAIツールです。 最初の試行は失敗に終わったものの、徐々に自分のワークフローに馴染ませることができました。そして先日、アプリ開発がまた「楽しい」と感じられるようになったのです。これは予想外でした。 本稿では、自分がエージェンティック・コーディングをワークフローに取り入れた方法と、それが個人開発への視点をどう変えたかを共有します。 * 翻訳元記事(英語): Agentic coding made programming fun again 自分のアプリに技術的負債が山ほどあった ご想像のとおり、9年も続くサービスをメンテするのは本当に大変です。 初期の頃は新機能の追加も簡単で

By Takuya Matsuyama
個人開発を7年以上続けて分かった技術選択のコツ

個人開発を7年以上続けて分かった技術選択のコツ

個人開発を7年以上続けて分かった技術選択のコツ InkdropというMarkdownノートアプリを作り続けて7年になる。 お陰さまでその売上でずっと生活できている。 これまで個人開発でどう継続していくかについて「ユーザの退会理由をあれこれ考えない」とか「アプリの売上目標を立てるのをやめました」とか、ビジネス面あるいはメンタル面からいろいろ書いてきた。 今回は、技術面にフォーカスして、どう継続して開発していくかについてシェアしたい。 TL;DR * 最初はとにかく最速でリリースする事を最優先する * 迷ったら「ときめく方」を選べ * 程よいところで切り上げて開発を進める * 使っているモジュールがdeprecatedされるなんてザラだと覚悟する * 古いから悪いとは限らない * シンプルにしていく * 老舗から継続の秘訣を学ぶ * 運ゲー要素は排除しきれない 最初はとにかく最速でリリースする事を目標に技術選定する 開発計画とビジネス計画は切っても切り離せない。 コーディングに傾倒するあまり完璧主義に陥って結局リリース出来ないまま頓挫してしまう個人開発者は多い

By Takuya Matsuyama
子育て中の個人開発者の一日

子育て中の個人開発者の一日

子育て中の個人開発者の一日 どうもTAKUYAです。 久しぶりに生活まわりの事を書きたい。自分はInkdropというMarkdownノートアプリを売って生きている。 子供も無事順調に成長しており、あと数ヶ月で3歳になるというところで、イヤイヤ期もやっと終わりが見えてきた。 生活パターンもなんとなく定着しつつあるので、ここで一旦どんなルーティンなのか書き出してみる。ちなみに当方今年で40歳。 平日の1日の流れ * 06:30 妻と子供起床、朝食 * 07:10–30 俺起床、朝食 * 07:40 布団を畳んで子供を着替えさせる。妻はその間に化粧や通勤の準備 * 08:00 ストレッチと軽い筋トレ(腕立て50回、スクワット100回) * 08:10 妻と子供を見送る。15分前後瞑想 * 08:30 散歩 * 09:00 作業開始(カフェまたは家) * 11:00 昼飯 * 12:00 ダラダラする * 12:30 作業再開(だいたい家)

By Takuya Matsuyama