離脱率を下げろ!個人開発でユーザ数1万人を達成する方法

離脱率を下げろ!個人開発でユーザ数1万人を達成する方法
ユーザ数の伸び悩みを打破できた理由は、新規ユーザではなく既存ユーザに注力する事だった
こんにちは、Inkdrop開発者のTAKUYAです。本エントリは僕と同じように個人開発を楽しみ、成果を出している方にお話を伺う企画です。前回のMENTAの入江さんに続き、今回は家族向けToDoアプリ「ファミリーTODO」を開発されているhirothingsさんに体験談を語って頂きました。ToDoアプリは言わずもがな無数の類似アプリが存在するレッドオーシャンです。その中で、ご自身の原体験からアイデアを発想し、伸び悩む厳しい状況も楽しみ、周りから意見を積極的に取り入れる姿勢によって、見事に1万ユーザを獲得しました。「作ったは良いけど全然伸びない…」と悩んでいる方にぜひ読んで頂きたい内容です。それではどうぞ。
文章: hirothings / 編集: TAKUYA
- 過去の自分と比べて成長を感じてモチベーションを保つ
- 自分自身がユーザであり続ける・お金を主目的にしない
- 既存ユーザに注力して離脱率を下げる
- ASO対策をしつつクチコミで広げる
- 自分が納得するクオリティまではアプリを仕上げる
はじめまして、ファミリーTODOという家族のTODO共有アプリを運営しています。個人開発者のObjective-ひろC @hirothingsです。今回ご縁があり寄稿させていただくことになりました。
個人開発をしていて、リリースまでは早く世に出したい一心である程度走りきれると思います。
が、リリース後伸び悩む時期が1番辛い。
ですよね。同じ気持ちの方は結構多いと思います。僕自身もリリース直後はTwitterの告知に反響があり、多くダウンロードされ、自己肯定感も満たされましたが、次の日には虚しくストンと数字が落ちました。

そんな状況から、1万ダウンロードを突破するまでの1年間。どうやってモチベーションを保ったのか、どうやって波に乗ることができたのか赤裸々に語ります。個人でアプリを出したけど、結果がなかなかついてこない方の支えに少しでもなれば嬉しいです。

ダウンロード数が地に落ちた時期は正直、モチベーションも地の底でした。0 DLの日はAppStore Connectから目を背けました。家に帰るとダラけるので、仕事終わりにオフィス近くのカフェで毎日アプリの機能改善をしていました。そんな日々のなか、「本当に今やってることは意味があるのか?誰も必要としていないのでは?」と思うと辛かったです。
ただただ、なんとなくこのアプリは成功する。今は機能が足りていないだけだという根拠のない自信だけはありました。なぜなら自分が最初のユーザーだったからです。ファミリーTODOは当時の彼女とタスク共有したいという内から生まれた欲求と、周りのエンジニアが家族のTODO共有をSlackでしている→ハックしてでも共有したい需要があるなら、それを民主化すれば多くの人が喜ぶのでは?という仮説から生まれました。
なので、自分はこのアプリは絶対便利だと思っていました。何よりも、自分自身がまだ中途半端な状態だと気づいているのに、その状態でアプリを諦めるのは勿体ない。やるだけやってみてダメだったら仕方ないという気持ちでした。
※のちに気づいたことですが、ダメだったとしても経験になるし、参考書では学べない知見を得られます。
そんな中、TAKUYAさんのこのツイートを見て必ず最後まで走り抜けようと決意しました。
個人開発でもなんでもそうですが、成功している人の考え方や価値観を盗むのは大事です。Zoomがマーケティングをせずにずっと開発に注力していた話も参考に、ひたすら開発していました。
ちょっと当時を思い出して、エモーショナルな話になりました。では具体的にどうやって日々の進歩を感じるかというと、「成長率で判断する」ことです。これが芽の出ないときの精神安定剤になります。個人アプリの初期ダウンロード数なんてせいぜい2桁あれば良い方ですが、その絶対数を見て凹まずにどれだけ前の期間より成長したかに注目して計測することです。
週間ダウンロード数が先週:20→今週:30になっただけでも1.5倍の成長。
ユーザー数xxx人で今日の売り上げが100円だとしても、10倍のユーザーになった時は1,000円、100倍なら1万円と考えると面白くなってきます。
あと、焦って日々の数値の上げ下げで一喜一憂しがちですが、それだと続かないです。ツール系のアプリは結果が出るまで時間がかかります。個人開発で広告も打てない状態なら、尚更です。(SNS, ゲーム系はバズったら祭りになるかもしれない) すぐに結果が出るとは思わないことが大事です。
逆にアプリリリース初期から成長が難しいんじゃないか?と思うケースを挙げてみました。
自分の実体験から生まれたアプリであることが重要だと思っていて、逆に自分が (チームが)、このアプリは世の中に本当に必要か?と少しでも思っているのなら作るのをやめたほうがいいかもしれない
過処分時間が激しく溶けるので、副業で案件やった方が何倍も稼げる。芽が出る人のほうが少ない。そんな世界でずっとアプリに愛を注ぎ込むには偏愛が必要。
自分の中での”偏愛”はアプリの成長です。結果が伴わない時期に心を込めてすくすくとアプリを育てられることを楽しめるかです。売り上げやユーザーの声はその先に付いてくるものだと思います。

リリースしてすぐは、足りないことだらけでやることが満載ですよね。リソースが潤沢にあるわけではないので、厳しい取捨選択が必要です。停滞期にどのユーザーを最優先に開発するか?ですが、それはコア機能に価値を見出してくれたアーリーアダプターです。
ファミリーTODOの初期は電話番号ログインしか使えなくて20%のユーザーはそこで離脱していました。ユーザーや開発者の知人の多くからゲストログイン機能の実装を勧められていました。なぜなら目に見えて足りない機能だったからです。しかし、そこで20%の新規を救うことはグッと我慢して今使ってくれているユーザー向けに下記の機能開発に注力しました。
- タスク追加・完了時の家族へのPush通知
- プロフィール写真のアップロード
- タスクの並び替え
- リマインダー
- 複数ユーザー指定のタスク作成..etc
どれもダウンロードして電話番号認証まで突破してくれたありがたいユーザー🙏向けのものです。特にプロフィール写真のアップロード機能や複数ユーザー指定のタスク作成機能は、ユーザーの声から生まれたものでした。

今いるユーザーを大事にしなかったら、離脱率はいつまでも改善しないまま、たとえユーザーが10倍, 100倍増えても、それに比例して×離脱率分、休眠ユーザーも増えてしまうことになります。
リリースから4ヶ月経った頃、ASO(App Store Optimization)の改善に着手してストアの文言など見直しました。すると、そこからダウンロード数がじわじわ伸びてきました。

見てもらえないと良いアプリを作っても意味がないことをこの頃から意識し始めました。やはり開発している方が楽しいので、マーケティングはおざなりになりがちですね。ASO対策は勉強してリリース初期からやっておくことが大事だと今は思います。
知り合いの個人開発者はアプリリリースして、ASOだけ頑張ってそのあと半年放置していたら、DL数が伸びたので、本格リニューアルに踏み切ったそうです。そういう例もあります。
そんな中、個人開発で大成されているガッキーさん@cloverkizunaと出会ったのがもう一つの転機でした。ガッキーさんは、初めて出会ったその日に、目の前でアプリを触って改善点を即座に10個くらい出してくれました。(すごい)

ちょうど離職して時間は有り余っていたので、それを1か月かけてほとんど全て実装しました。このタイミングで、電話番号認証なしでアプリ利用できるようにし、リマインダーの実装をしました。
すると、2, 3ヶ月経ってからさらにDL数が伸び約1年経った頃、1万ダウンロードを超えました。TODOアプリというレッドオーシャンで抜き出るためには、相当痒いところに手が届く品質でないといけません。ちょうどこのタイミングである程度自分自身も満足するクオリティになったので、数字が伸びたと分析しています。

2度の成長期を経たころには、AppStoreのおすすめのアプリに掲載され、ユーザーからも”単身赴任の家族のコミュニケーションに助かってます”など嬉しいレビューをいただけるようになりました。
不思議なもので、1度じわじわとダウンロード数が伸びるとそこから停滞することはあれど、落ちることは一度もありませんでした。キャンペーンを打たずにクチコミで評判が出た場合、爆発力こそないものの安定して数字が伸びるようです。
自分の実体験を踏まえて、アプリリリース直後の停滞期を踏ん張り多くのユーザーに支持されるために大事なことをまとめました。
- 自分が1人目のユーザーであること
- 最初にアプリに価値を見出して使ってくれているユーザーの声に耳を傾けること
- その人たちが喜ぶことをすること
- 本当に価値があると思うなら、自分が納得するクオリティまではアプリを仕上げること
- 結果を定期的に観測すること。その中でも成長率を重視すること
ファミリーTODOは以下のリンクからご利用いただけます。もし気になったら使ってみてください。
少しでも参考になれば幸いです。
— — hirothingsさん、ありがとうございました。「伸び悩み」というのは多くのアプリが経験していている共通の問題でしょう。その問題に対して「既存ユーザに注力する」という解を見出すまでの過程がとても印象深かったです。他人と比べず、過去の自分と比べることで成長を感じるという方法は、アプリ作りに限らず生き方全般に言える事だと思いました。アプリ作りは人を喜ばせる事が目的であって、他人に勝つことではないからです。人と比べてモチベーションが落ち込んでいた方は、ぜひ過去の自分を振り返って成長した所を探してみてください。
