シドニーの会社から仕事の相談が来た

シドニーの会社から仕事の相談が来た

シドニーの会社から仕事の相談が来た

フリーランスとして海外の仕事をゲットするまでの奮闘記

自分はフリーランスをしつつ脱受託を目指してMarkdownエディタアプリを作ったりしている。兼ねてから海外の仕事が欲しくて、ロンドンに旅行した際に現地のミートアップでライトニングトークをしたりと地道に活動をしている。アプリのマーケティングも兼ねて書いている英語ブログは、先日書いた記事がバズって1700ものclapsを獲得した。そんな折に、オーストラリアの会社からお声がかかった。その経緯と自分の取っている戦略について書きたい。

  • 海外の仕事は自己投資・さらなる刺激・報酬アップが狙い
  • 相談主は自分のアプリのユーザさんだった
  • ブログは効果的な営業活動
  • 人の紹介はリスク回避の効果がある
  • 求人サイトは基本的に不利
  • プラットフォームに自分を埋もれさせないための戦略

まず、海外の仕事を取りたい理由は主に以下の3つ:

  1. 英語レベルを上げたい
  2. 面白い事がしたい
  3. 報酬を上げたい

海外の仕事を取るために英語を勉強するのではいつまで経っても上達しない。その逆で、英語を上達させるために海外の仕事を取るのが最短のアプローチ。

基本的に働きたくない。好きなことしかしたくない。でもどうせ働くなら面白い事をしたい。幸い、これまでもスタートアップや大企業さんのお手伝い、きゅんくんのいるプロジェクトに混ぜてもらったりと、いろいろ面白いことに関わらせて頂いてきた。で、次は海外という流れ。

ニューヨークやカリフォルニアのような物価の高い地域の仕事なら東京より高い報酬が期待できる。あと、外貨を稼げるようになっておきたい。日本はその豊かさを保ちつつも、今後人口が減ってゆっくりと安い国になるから。

偶然か必然か、今回相談してくれた人は拙作アプリInkdropのユーザさんだった。それも半年以上使って下さっているロイヤルカスタマー。機能要望も以前から熱心に書いてくれていて、名前も覚えていた。LinkedInを見るとその人はシドニーの会社のCTOだった。

もちろん会ったことは一度も無いけど、もはや半分知り合いのような感じだった。そしてなにより、先方は既に自分の実力を知っている。だから説明の手間が省ける。アプリの制作活動が図らずしてフリーランスとしての営業活動にもなっていた。

今はどういう契約形式が良いか話し合っている。自分は依頼ベースの契約を希望しているのに対し、先方は日給制を希望している。でも日給制は仕事の遅い人に多くの報酬を支払う仕組みなのでやりたくない。ただ今回ばかりは一度だけそれで受けてもいいかなと思った。その理由は、一度も会ったことが無いし信頼関係がまだ確立できていないから。日給制は人材の試用に向いている。

一度日給制でやってみて、自分のパフォーマンスを見た後に改めて契約形式を検討して欲しいと提案すると、前向きな返事が返って来た。プロジェクトの説明資料を作ってくれるらしい。まぁ、案件獲得を焦る必要はない。期待せずに待ってみることにする。

今回の自分のケースはかなり特殊だけど、参考までに海外の案件獲得に向けた自分の戦略と考え方を記しておく。

実を言うと、英語ブログ経由で仕事の相談が一度来たことがあった。でも「あなたの会社について教えていただけますか?」と質問したらなぜか返事が来なくなった。ただこれはいい兆候と言える。いい記事を書いて注目を集めれば取引先を引き寄せられるかもしれない。ブログは日本に居ながらにして出来る有効な営業活動だろう。

ブログで書くといい内容は、自分の実体験や実績で裏付けられた役に立つ話。そういう話は情報的価値が高いのでウケがいい。誰でも書けるようなTipsやマニュアルみたいなものは、よっぽど目新しい話題でない限りほとんど読まれない。趣味ならともかく。

あと凝った英語表現は必要ない。意味さえ通じればこのエントリのようにバズる。むしろ平易な表現の方が第二言語としての英語話者にも読みやすい。

独立当初から仕事は全て知り合いを通じて紹介して頂いていた。その理由は主にリスク回避のため:

  • 線より面の関係の方が、音信不通になるなどのトラブルを回避しやすい
  • お互いの素性や信用が人間関係から推し量れる
  • 他薦ほど自分の実力を裏付ける出会い方はない

ただしこの方法は事前にある程度のツテと信用が必要。自分は海外とのツテがほとんど無いのでこの方法が使えない。そういう場合によく利用されるのが求人サイトとなる。

海外の仕事を獲得するにあたって、知り合いからAngelListなどのスタートアップ系求人サイトの利用を薦められたりした。ただ使っては見たものの、自分には合っていないなと感じた。求人サイトは原理的に特定の条件を満たした少数だけが得をするから。

まず、こういうサイトに登録した時点で自分は「陳列される存在」になる。その中で目立つためには、プラットフォームに自分を最適化させる必要がある。それは至難の業で、分かりやすい実績が求められる。例えば、GitHubで何千ものスターを獲得したことがあるとか、超有名なライブラリのコアメンテナだとか、元facebookですとか、初見で「おっ」と目を引くプロフィールでなければ5秒でタブを閉じられる。もしそういう類いの実績がなければ、価格競争という名の過当競争が待っている。つまり買い叩かれる。

逆に募集側も同様に「陳列される存在」となり、勝ち負けがはっきり出る。いい条件を提示する会社には応募が殺到して、それ以外の会社は閑古鳥が鳴く。みんな良いところと働きたいに決まっているから。中にはCTOを募集している会社もあってビックリした。全てではないにしろ、こういった会社には自分達の足を使わずに人材を集めようとする姿勢が透けて見える。応募側もまた然り。

先述の通り、フリーランスで案件を得るなら紹介が一番安心できる。でも自分のような駆け出しはツテが無いので、それを作り出す必要がある。そのための戦略は以下の3種類:

  1. 説明不要のひと目で分かりやすい実績を作る (GitHubで数千スターを集めるなど)
  2. とにかく足を使う (ミートアップやカンファレンスに登壇するなど)
  3. 取引先をマーケティングする (アプリやブログで目立って先方を引き寄せる)

これらに共通しているのは、人と異なる事をして少しでも抜きん出る事。クリエイターは一人ひとりに個性があるのだから、それを発揮できる方法でアプローチするのがいい。文章が得意ならブログを書けばいい。ライブラリを作るのが得意ならスターを稼げばいい。一朝一夕には出来ないけど、その分長期的に効く。求人サイトだけが取引先を見つける方法ではない。

偉そうに書いたけど自分も毎日手探りだし最後は運頼み。焦らずマイペースにやっていこう。

作ってます: https://www.inkdrop.app/

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