Stripe外からアプリの支払いを受け取った時の対処手順

Stripe外からアプリの支払いを受け取った時の対処手順
カード決済の失敗理由は基本的に分からない/信用コストは自分で払う必要がある/根本解決は事業者としての信用を高める事
どうも、個人アプリ作家のTAKUYAです。サブスク制のサービスを、カード決済プラットフォーム「Stripe」を使って組んでいます。基本的に支払いはクレジットカードとデビットカードのみ受け付けています。しかしながら、そのカード決済がどうしてもうまく行かないケースがごく稀にあります。その時、例外的にPayPal経由で支払ってもらうようにしています。本稿ではその際の管理手順について、自分用の備忘録も兼ねて解説したいと思います。
カード決済の失敗理由は基本的に分からない
クレジットカード決済は様々な理由でdecline(拒否)されます。体感的には全体の10%ぐらいが失敗しているように見えます。declineされるポイントは2つです:
- カード登録時
- 決済実行時
失敗理由は実に様々で、StripeのドキュメントにDecline Code一覧が記されています。
この中でも最も多いのがdo_not_honor
とgeneric_decline
です。その説明は両方とも:
Description: The card has been declined for an unknown reason.
Next streps: The customer needs to contact their card issuer for more information.
となっており、全く参考になりません。3年間のサービス運営を通じてユーザさんと一緒に調べた結果、以下のケースがありました:
- デビットカードが継続支払いに対応していなかった
- 日本からの請求を不審と判断された
- .info ドメインが不審と判断された
- Let’s EncryptのSSL証明書が不審と判断された
最初の理由以外はすべてセキュリティ上のfalse positiveです。この場合、カード発行会社に直接連絡してdeclineしないようにお願いするしかありません。それでも必ず許可が下りるとは限りません。別のカードを試したらすんなり通る事も多々あるので、基準はカード会社ごとにバラバラのようです。あと、今まで何ヶ月間も普通に決済できていたのに突然謎の理由で拒否されるケースも多くあります。カード所持者を守るための仕組みですから、一概にカード会社を責められる問題ではないのが難しいところです。
信用コストは自分で払う必要がある
上記の経験から、僕のサービスではもともと inkdrop.info というドメインを使っていたのですが inkdrop.app に変更しました。また、彼らはwhoisも見ているようですので、虚偽の情報を設定しないように注意が必要です。Let’s Encryptは無料で手軽に入手できるSSL証明書である一方、フィッシングサイトなどにも濫用されるらしく全く信用されていないようです。そりゃそうですね、個人や法人の実在確認無しで発行できるんですから。なので自分のサービスが法人化した折に、社会的信用の高い証明書を買うつもりです。
つまり、Stripeは個人でも審査無しでカード決済が導入できる一方で、上記のような信用上のコストがのしかかる事が分かりました。それもなかなか無視できない大きさです。
有料アプリを売る手段の代表例として、AppleのApp Storeがあります。彼らの課金手数料は30%と高いですが、この信用上のコストだと思うと納得できます。アプリのサイズが大きいとCDNの配信コストも馬鹿になりませんが、App Storeでは一切かかりません。うまく行けばApp Storeがアプリをピックアップして宣伝してくれる事もあります。決済トラブルはAppleが対応してくれます。やみくもに課金手数料を忌み嫌うのではなく、こういったコスト面・マーケティング面でのメリットが30%に含まれている事を念頭に置くと良いでしょう。
外部から支払いを受け取った場合の調整方法は2つ
このように、カード決済失敗の問題に対してこちらで対処を尽くしても解決できないケースが稀にあります。その場合は諦めてPayPal経由で支払いを受け付けるようにしています。自分のサービスでは、1年間のライセンス料($49.9)をPayPalから請求しています。その際、Stripe上では以下の2つの場合に分けて支払いステータスを調整します:
- 試用期間がまだ残っていて請求がまだ実行されていない
- 試用期間がすでに終了して請求が実行された後
それぞれの手順について説明します。
Customer Balanceにクレジットを追加する
試用期間がまだ終了しておらず、Stripe側でまだ請求が実行されていない場合。予定している請求が試用期間終了時に実行されます。この請求が失敗してしまわないように、Customer Balanceを調整します。以下の通りStripeには台帳機能が備わっていて、「借り方(credit)」「貸し方(debit)」の管理ができます。
まず顧客のアカウントを開いて、Customer Balanceのセクションを確認します。

“Add balance adjustment”をクリックします。

上記のようにCreditを追加します。要するに、あなたはこの顧客に対して「借りがある」と設定する訳です。すると、次回の請求からこのCreditの額面が差し引かれます。以下のようにAdjustmentの項目が追加されます:


これで調整出来ました。
請求ステータスを手動で支払い済みに変更する
試用期間が終了してStripe側から既に請求が実行された場合。Customer Balance Creditを既に実行された請求に対して後から適用する事は出来ません。実行された請求(Invoice)を手動で調整します。該当するInvoiceを開きます:

「…」ボタンをクリックします。

「Change invoice status」を選択します。

「Paid」を選択します。説明にある通り、この操作によって該当の請求がStripeの外で回収された事にします。よく出来てますね。注意欄で表示されているように、この操作は取り消しできないので慎重に操作して下さい。
これで支払いステータスを調整できました。
事業者としての信用を高めていきたい
Stripeはカード決済の「導入」と「運用」の開発コストを大幅に下げてくれますが、信用面は一切サポートしてくれません。トレードオフですね。今回ご紹介した通り、機能面では申し分なく柔軟な対応が出来てとても便利です。しかし、いち事業者としての信用は自分で高めていかなければならない事を常に痛感します。これは僕にとって今後の課題です。今のところは、適宜手動運用で対応していこうと思います。