Inkdropの総売上が10万円を超えました

Inkdropの総売上が10万円を超えました

Inkdropの総売上が10万円を超えました

(本記事は「Inkdrop has reached $1,000 sales」の日本語訳です)

久しぶりにInkdropのことについて書きます。初めて知る人のためにご説明すると、InkdropはMarkdown愛好者のためのノートアプリです。プログラマー向けEvernoteと言えばすぐイメージできると思います。僕はこのプロダクトを多くの人に支えてもらいながら、一人で作っています。

クローズドβを経て去年の10月に正式リリースして、はや半年が経ちました。先月iOS版をリリースしたところです。Android版も順次リリース予定です。そして、表題にある通り総売上が10万円を達成しました。めでたい!本当にありがとうございます。どうやらこのサービスでマネタイズはできると言ってもよさそうです。希望が見えてきました。

脱フリーランス・脱受託を目指して自分のプロダクトで稼ぐという活動は、いい意味で出来る限りネタにしてみなさんの参考にしてもらいたいと思っています。

本稿では、半年の運営を通して得た知見を共有します。

まとめ

  • 少数のヘビーユーザだけが使い続けている
  • 年間契約が約半数もいることが分かった
  • ゆっくりペースの成長でも充分食えそう
  • サポートできないから急成長しないほうがいい
  • 口コミで広まるようなサービス運営をしていきたい

現状のユーザ数について見てみます。まずユーザ登録数の総計は1200+です。大半がβ時代の登録者で、ほぼβ期間中にドロップしてしまっています。正式リリース後の登録者数は500人ぐらいです。しかし、その大半が試用期間後に削除の運命を辿っています。

以下の通り、DAUは30人強です。

はい、少ないです。グラフがまるでさざ波のごとく穏やかです。このほとんどが、課金して下さっている継続ユーザさん達です。なぜなら、課金ユーザ数が30人ちょっとだからです。新規ユーザはうち数人程度、という内訳です。

月額4.99ドルで課金ユーザ数が30人なのに、売上が10万円?そうです、実はほぼ半数が年間契約(49.9ドル)なのです。これには自分も驚きました。そういえば、自分もEvernoteやDropboxとかよく使うサービスは年間契約だわ。

年間契約してくださるという事は「今後一年間は使う気だよ」というメッセージと受け取れるので、提供側としては胸が熱くなるものがあります。

売上の推移は下記の通りです:

この実績から、6ヶ月かけて30人を集めれば毎月15,000円ではなく20,000円前後入ってくる事が分かりました。言い換えると、毎月5人の新規継続ユーザを獲得すれば月2万円の売上につながるという事です。

だとすれば、継続ユーザを急いで集める必要性はどうやら無さそうです。月30万円の売上に到達するには、6ヶ月間毎月75人の継続ユーザを獲得すればいいという計算になります。6ヶ月目には下記の額になります:

  • 新規年間契約 x 37人 + 月間契約(既存含む) x 225人 = 297,500円

これは目指すべき成長スピードのひとつの目安に使えそうです。

という事は、今の15倍の新規登録ペースが必要ですね。ちなみに今は毎月平均で60人強の登録がありますので、900人は必要となります。結構大変だ・・。でも食っていく分には、一度に何万人もの人にリーチする必要は無さそうですね。

iOS版が先月出ました

もとい、一度に何万人もリーチできたところで僕一人では問い合わせに対応できません。それでは本末転倒です。僕は自分がしてほしいサービスを提供すると決めています。アプリがどんなによくても、お粗末なサポートのせいで使うのをやめた事が個人的にあります。自分のサービスもそうなりたくはありません。

相手も技術者なので難しい質問を受けることもたまにあります。セキュリティについてとか。そうすると1件あたり対応に1時間とか余裕でかかります。また、問い合わせを受けたら1次返信は24h以内と決めています。

だから、成長スピードがゆっくりである事はむしろ重要です。毎月900人の登録はおそらく個人で捌ける限界でしょう。FAQの充実化やユーザ同士で助け合える仕組みなども用意していくつもりです。

毎月900人をどうやって集めるのか、という戦略についてはいくつかボヤっと考えています。メールを送りまくったり広告をのせまくったりTwitterでイイネやフォローしまくったり、ましてや別のアプリユーザを奪うといった事はしたくありません。ちょうど最近、広告に載っていたアプリを利用してひどい目にあったばかりです。

僕の戦略は主に口コミを最大化する方向性です。なので基本的に「アプリを最高のものにする」ことが大前提です。そして、「アプリに付随する副次的な価値」を積極的に提供します。例えば:

  1. この記事のような、運営を通じて得た知見
  2. アプリ作りを経て得た技術的な知見
  3. ユーザ同士の出会い・交流

などです。技術的知見で言うと、一人でクロスプラットフォームのアプリを作っている例はめずらしいと思います。どうやって(受託もしながら)一人で迅速に高クオリティなモノの開発ができるのかというテクニックは、おそらく皆さんのためになる知見だと思っています。それをブログに書きたい。

ユーザがもうちょっと増えたら、オフトピックがウェルカムの緩いフォーラムを作りたいと思っています。例えば、今作ってるものを紹介しあったりとか楽しそうじゃないですか?笑あとは交流会を開いたりとか。そこで生まれた出会いや交流は、他には代えられないものです。

つまり、エンゲージメントを直接的に増やすのではなく、サービス全体の評価を上げる方向の努力をします。即効性はありませんので、地道な努力が要されます。しかし、広告などに頼るのは出来ることをやり尽くした後の最終手段です。

Android版をはやく出したいです。3ヶ月以内目標で。その次は、ノートのシェア機能の対応です。個人的にもすごく欲しい。

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万年ペーパーの自分が車の運転を楽しめるようになった理由

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どうもTAKUYAです。大学の入学前に免許を取って以来ずっとペーパードライバーで、都市生活では出来る限り運転は避ける生活を送っていた。事故を起こせば人を◯してしまう可能性もある代物を日常的に運転するなんて考えられなかった。 そんな自分に転機が訪れたのは、結婚して大阪に戻った事と、子供ができた事、そしてアウトドアに興味を持った事だ。大阪近辺だと箕面とか野勢、神戸、丹波篠山などが日帰りでドライブしやすい距離だ。それで、恐る恐るタイムズのカーシェアで時々ではあるが運転するようになった。 他の車も生きた人間が運転しているという驚き まず運転していて気づいたのは、他の車にも生きた人間が運転していると言う点だ。そんなのは当たり前だろと思うかもしれないが、結構新鮮な発見だった。Grand Theft Autoなどの現代をモチーフにしたゲームをプレイすれば分かるが、NPCの車の動きは鈍臭いのでガンガンぶつかる。プレイヤーの進行を予測した動きなどしないからだ。 しかし現実では相手も事故りたくないので、お互いに動きを読み合い、譲り合って運転する。ルードな運転手もたまにいるものの、どちらかがよっぽ

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